ISILの脅威拡大~公安調査庁が「国際テロリズム要覧」を刊行
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公安調査庁が最新の「国際テロリズム要覧」2016年版を刊行した。多くのページがイラク・レバントのイスラム国(ISIL)について割かれており、アルカイダとの関係も詳述されている。近年はイスラム過激派の思想に感化され、自らが暮らす欧米諸国でテロを実行する「ホームグロウン・テロリスト」が深刻な脅威となっていることも重視しており、日本への波及も懸念されている。
15年は海外で日本人が被害に遭うテロ事件が相次いだ。ISILに拘束された日本人男性2人が殺害されたとみられる映像が発信されたことをはじめ、チュニジア、フィリピン、バングラデシュで日本人が死傷した。これらの事件では、イスラム過激派のテログループが犯行声明を出している。こうしたなかで、最も注目されている国際テロ組織がISILだ。
ISILの起源となる組織は、アブ・ムサブ・アル・ザルカウィという人物が設立したジャマート・アル・タウヒード・ワル・ジハード(JTJ)とされている。2004年にJTJはアルカイダの傘下に入り、イラクのアルカイダ聖戦機構(AQI)と改名。06年にAQIはムジャヒディン諮問評議会(MSC)を設立したが、ザルカウィは米軍の空爆で死亡した。さらにMSCはイラクのイスラム国(ISI)の「建国」を宣言。13年にイラン・レバントのイスラム国(ISIL)に改名したが、シリアでの活動拡大をめぐってアルカイダとの対立が激化し、両者は関係断絶を表明した。
テロ組織としてのISILは、アルカイダと同じスンニ派過激組織に分類されるが、思想から戦略、組織構成、宣伝手法に至るまでまったく異なる存在となっているという。アルカイダが衰退する一方、ISILは東・北アフリカだけでなく、東南アジアなどにも勢力を拡大。イラクやシリアでは有志連合による空爆で領域拡大に一定の歯止めがかかったとみられるが、今後は欧州諸国などでのテロにより、勢力を挽回しようと試みる可能性が指摘されている。
公安調査庁のHPでは、2016年版の要約版が公開されている。
【平古場 豪】
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