2024年04月20日( 土 )

八幡西区役所跡地開発で地域活性化目指す(3)

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(株)サンキュードラッグ 代表取締役社長兼CEO 平野 健二 氏
大英産業(株) 代表取締役社長 大園 信 氏

 ――雇用の面まで完結できる施設にしたいということですね。

 平野 一般に高齢者や障害者の方を「~ができない人」という捉え方をしたがるような傾向があるように思います。そして福祉の対象にしたがります。しかし、そうではなくて、働ける方に何をすれば働いていただけるのかを考えるべきではないでしょうか。住んでいる場所で働けるのならば、こんな良い環境はないでしょう(笑)。

 大園 私たちも今、プランを見直していて、本当にシニア棟を1棟単独で建てるかどうかを再検討しています。折々、サンキュードラッグさんとの打ち合わせでヒントをもらいながら、やはり中に入っていってお互いに共生する、これが共に生きるということじゃないかと考えるようになりました。

 方向性としては、単身シニア住宅棟ということではなく、今はまだプランの段階だが、そういうかたちは理想的ではないのではないかと考えるようになってきました。1棟だけをどうするというのではなく、もっとごちゃ混ぜにしていったほうがいいのではないか。シニアだけを集める1棟にするよりも、多くの世代がモザイク的に入居したほうが、豊かな生活を送っていただけるのではないかと考えるようになりました。

健康を促進できる暮らしを

 ――ドラッグストアという形態は若い方からお年寄りまで幅広く利用しますし、お医者さまはどの世代にとっても近くにいてもらった方が安心ですね。

(株)サンキュードラッグ 平野 健二 代表取締役社長兼CEO<

(株)サンキュードラッグ 平野 健二 代表取締役社長兼CEO

 平野 言い方が悪いかもしれないが、生まれてから亡くなるまでの商品がそろっているのがドラッグストアです。

 大園 企画の肝は地域、多世代との共生、これに尽きます。私たちが手がけるマンションそれぞれで、この点を意識はしていますが、八幡西区役所跡地開発では一層力を入れており、理想を実現にできそうだと考えています。

 平野 実は福岡県はとても健康診断受診率が低い県でございまして、長年、全国最低の状況が続いています。

 たとえば協会健保(全国健康保険協会による健康保険)でいうと、現在、本人の検診受診率が52%、被保険者の家族が14%です。そして、高齢者の1人あたり医療費は全国トップ。全国平均より2割くらい高いのです。逆に長野県は健診受診率が全国最高で、1人あたりの医療費が最低となっています。健康診断を行うことが大事ということは、正確な統計ではないですが、ある程度言えることがわかります。

 健康診断を受ける場所さえわからない、わかったとしてもわざわざ行かない、ということが多くあるのが現実なのです。今、本当に具合が悪くて何とかしたい人は良いお医者さまを探してどこまででも行くのですが、あるサプリを飲み続けたら、また、ある運動を続けたら20年後に生活習慣病にかかるリスクが10%減少しますと言われてもそれを続ける人はまずいません。

 つまり、予防というのはわざわざする行動ではないということがわかります。予防は何かのついでにできるようにしなくては行動に移さないのです。ですから、ドラッグストアに週3回、どうせくるのでしたら、そのときに会員カードをピッとやって血圧を測ったらいいじゃないですか。そしてそれをデータ化しておけばじゃないですか、という提案ができたらと考えています。病気を患った際、健常時のデータがあるということはお医者さまにとって非常に重要な診断材料になります。

 調剤データもストックしておけば、過去にどんなことをしてきたか、ということを私たちから出すことができます。そういった総合的な健康の拠点にしていけたらいいなと考えています。その点が評価されて、経産省の平成27年度寿命延伸産業創出推進事業に選ばれました。非常にユニークだったということと、自助を促進する点が認めていただけたのだと思います。

 ――今、データを管理している人数はどれくらいいらっしゃるのですか。

 平野 経産省の実証実験は一度、終わっているのですが、弊社の購買履歴という意味で言うと、35万人になります。出店しているのは北九州・下関エリアですので、そのエリア内の人数です。とくに門司区は本拠地ということもあり、門司区の会員数は門司区の世帯数を超えています。

 ――門司はとくに高齢化が進んでいますね。

 平野 そこで病気になってからどうするより、ずっと健康でいたいのはみんなの願いだと思います。その助けになるなら住民、医療機関、ドラッグストアでWIN-WINの関係をつくることができますね。今回のプロジェクトも医と住まいの共存が、大英産業、サンキュードラッグの顔ぶれでわかりますが、その点が高く評価されていると思います。

(つづく)
【司会・編集/柳 茂嘉】

<プロフィール>
oozono大園 信(おおぞの・まこと)
大英産業(株)代表取締役社長。1949年、大分県宇佐市生まれ。専修大学商学部卒業。73年に常務取締役就任、77年に副社長就任を経て2001年に代表取締役社長に就任。住まいのニーズを満たすことを通じて地域の人々とともに成長していける企業を目指す。趣味はゴルフ。

<プロフィール>
hirano平野 健二(ひらの・けんじ)
(株)サンキュードラッグ代表取締役社長。1959年、北九州市門司区生まれ。一橋大学商学部経営学科卒業後、サンフランシスコ州立大学経営大学院でMBAを取得し、大手製薬メーカーに就職。86年にサンキュードラッグに入社、2003年に代表取締役社長に就任。趣味はゴルフ。

 
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