2024年04月19日( 金 )

【熊本地震】一丸となった復興への歩みを実践すること

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

味岡グループ 代表 味岡 和國 氏

 熊本県球磨郡を拠点に生コンクリート製造業14社23工場、建設資材販売、建機リースなどの企業を傘下とする味岡グループを率いる味岡和國代表。自社事業のトップマネジメントを行うと同時に、全国生コンクリート工業組合連合会(ZENNAMA)理事および九州地区本部長、熊本県生コンクリート工業組合理事長などの要職に就き、業界の発展に寄与し続ける。2016年4月に発生した熊本地震による甚大な被害から、復興するための歩みについて語っていただいた。

(聞き手:弊社代表 児玉 直)

山林の環境を変える

 ――まずは、今回の熊本地震に際し心よりお見舞い申し上げるとともに、1日も早い復興が実現することを祈念いたします。味岡代表は、生コンクリート業界の要職のみならず地元の森林組合(多良木町森林組合代表理事組合長)や商工会(多良木町商工会理事長)のトップにも就かれております。今回の熊本地震後、どのような動きを実施されましたか。

 味岡 ご存知の通り熊本地震は、熊本市内と益城町、嘉島町、西原村、阿蘇地区(阿蘇し、南阿蘇村)が甚大な被害を受け、宇城市、八代市も一部被害がありました。当社の本社や営業所でも大きな揺れが発生しましたが、甚大な被害はありませんでした。

 震災後すぐに、各地区生コンクリート工場、森林組合関係、商工会、熊本県建設産業団体連合会と連絡を取り合い、今後の復興についての対策を協議を進めております。全体としては、高速道路および一般道の通行止を最小限にし、交通網の復旧・開通が実現したのではないでしょうか。また、家屋の崩壊や道路の亀裂・損壊などが多数発生したにも関わらず、火災はほとんど発生しませんでした。それは、過去の震災からの教訓として火災の発生を防ぐために、ガス会社が供給の元を閉めたのです。

 ――地震による被害を大きくした原因として、現在の我が国の森林の環境が、山の地盤を弱くし地滑りを起こしたことが挙げられております。地元の森林組合のトップとしてのご見解をお聞かせください。

味岡グループ 味岡 和國 代表<

味岡グループ 味岡 和國 代表

 味岡 地元・熊本の林業事業者様には、杉や檜などの針葉樹から楢や山桜、桂などの広葉樹を植えるように指導・推進しております。なぜなら、針葉樹は根が浅く、それが原因で保水力が低く土石流の大きな原因となります。一方、広葉樹は縦横に深く根を張ることで、保水力を高め土石流の発生を防ぎます。

 我が国の山林に針葉樹が増えたのは、大戦後の住宅政策を含めた復興の国策により、日本全国の山に杉・檜を植栽することを推進いたしました。国が補助金を出して、各地の山地にどんどん造林し増やしていきました。そして、その木材の加工場を国と自治体が補助金を出し、各所の森林組合に開設し稼働させました。

 残念ながらそれら針葉樹の造林が結果的に生産過剰となり、木材の価値が低下し、山を手放す林業従事者が増加しております。今の木材の材価は、立方メートルあたり約1万円前後と市況は低迷しています。
 このような状況を招いた原因としては、時流に遅れてしまったこと、木の品種改良ができなかったことが挙げられます。これは、(現在は変わりつつありますが)各地区およびその上部団体である県の森林組合連合会のトップは、自治体の首長や県議会の議長・副議長らが務めてきたことも影響していると考えられます。本来は、林業の専従者が組合のトップであるべきところ各地区の森林組合は自治体の議会関係者が運営していたため、時流に合わせた改革のスピードが鈍化したのではないでしょうか。

 木材はバイオマスでの用途という選択肢もありますが、採算ベースにのせるには最低でも10万m2の間伐材が必要で、その規模の設備投資は莫大となり、ほとんどが稼働していないのが現状です。よって我々は、独自で杉・檜の針葉樹に変えて、広葉樹を植えております。
 現在、広葉樹の山が存在するのは北海道のみで、九州では九州大学が椎葉村に原生林を所有しているのみです。広葉樹を植えることで、土石流などの自然災害から守ることで、生態系を良化させ、さらに地域を守ることができるのです。

 ――阿蘇地区の山林の崩落も針葉樹が原因であると。

 味岡 阿蘇地区の法面は、国や県、そして林業従事者のために、杉を阿蘇外輪山全体に植えたことが、土石流発生の原因です。春は桜、秋は紅葉など、自然に沿った山林に戻すことが急務です。そして山林で保水されることで、洪水を防ぐことができます。これにより、地震による二次被害を最小限に抑えることにつながるのです。

九州地方全体で支えること

 ――生コンクリート業界としての震災対応はどのようなものがありますか。

 味岡 供給側からの立場として災害復興の用途に関しては、設計価格より高い価格で販売しないように指示しております。復興特需で、前金を要求することをせず、また「むやみに価格をつり上げるな」と各工場に通達しております。

 さらに、現場が立て込むことも予想されますから、生コン配送時に待ち時間が発生致します。その待ち時間によって、生コン供給側が追加料金を請求するケースがあります。その追加請求も、災害復興においては行わないように指示しております。生コンを配送する時間も、極力先方の要求に応えるようにするようにしております。要するに、高圧的な態度や姿勢での対応は、「絶対にまかりならない」という体制で、生コンを供給させていただいております。

 そして生コン工場は、水を提供できることです。生コン製造時に使用する水は、飲料水がほとんどです。ミキサー車の内部をきれいに洗車して、ミキサー車で避難所などに運びました。このような緊急時は、皆が困っているのです。そのような時はお互い様という気持ち・姿勢で対応することを今回改めて思い知らされました。

 ――建設関連業界において復興には、ガレキの撤去や処理も今後大きな課題ですね。

 味岡 ガレキの撤去と処理は急務です。熊本県内だけでは限界がありますので、全九州に依頼することとなるでしょう。復興においては、今後は県内だけでなく九州地方全体で支援していく必要があります。我々、生コン業界含めた建設関連業界が、一丸となって早急に実施していかねばなりません。

【河原 清明】

建設情報サイトはこちら>>
建設情報サイトでは建設業界に関する情報を一括閲覧できるようにしております。

 

法人名

関連記事