2024年04月25日( 木 )

期待が寄せられている成長因子とは?(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 タンパク質とは、私たちの体の筋肉、血液、毛髪、皮膚、臓器などを構成する栄養素であり、生命活動において、なくてはならないものである。タンパク質のタンパク(蛋白)とは、もともと「卵の白身」という意味で、卵の白身には、実際にタンパク質が多量に含まれている。タンパク質を英語では「プロテイン(protein)」と言うが、生物にとって「一番基になる」と意味から出来た言葉である。
 このようにタンパク質は、その名前からも生命活動の主役であることがよくわかる。

midori タンパク質という名前は、ある特徴を持っている分子の総称でもある。どのような特徴かというと、多数のアミノ酸がつながってできた分子という特徴である。アミノ酸は20種類あり、12種類のアミノ酸は体内で生成されるが、8種類のアミノ酸は体内では生成されない。そのため、私たちは食べ物などで摂取する必要がある。タンパク質は、アミノ酸が少なくとも数十個、多い場合には数千個つながった巨大分子である。アミノ酸の組み合わせや順序によってタンパク質のかたちも変わり、タンパク質のかたちによってその機能も変わるようになっている。タンパク質のかたちと機能はさまざまで、タンパク質は物質の合成、分解、信号の伝達、輸送など、生命活動の支えになる諸々の活動をしている。

 今回はタンパク質のなかでも、とくに美容業界などで注目を集めている「成長因子」について取り上げてみよう。

 「成長因子」とは、別名「グロースファクター」とも言われ、簡単に言うと、細胞を刺激して細胞分裂を促してくれるタンパク質の一種である。
 ご承知のように、人間の体は約60兆個の細胞で構成されている。細胞には寿命があり、新しい細胞が生まれたり古い細胞が死んだりして、私たちの体は最適の状態を維持している。細胞が分裂して、新しい細胞が生成される際には、必ず細胞分裂を刺激する因子が必要となるが、この因子が「成長因子」である。 成長因子には、細胞分裂を活発化し、新陳代謝を促進したり、抗酸化作用により細胞の酸化を防いだりなどさまざまな役割がある。成長因子は体内でもつくられるが、加齢とともにその生産量が減っていく。この成長因子の減少は細胞の分化を遅延させたりして、老化の原因になるとも言われている。

 人体に関わる成長因子は、今まで約70種類くらいが発見されている。その70種類の成長因子は、それぞれの役割を持っているが、そのなかでも一般人に最も知られているのは、表皮の成長に関わっている「EGF(Epidermal Growth Factor/上皮細胞増殖因子)」という成長因子であろう。

 アメリカの生化学者スタンリー・コーエン博士は1962年に、この「EGF」というタンパク質を発見した。EFGは53個のアミノ酸がつながってできたタンパク質で、細胞成長促進の機能があることを、スタンリー博士はマウスの実験などで突き止めた。
 なおスタンリー博士は研究を続け、皮膚の神経細胞の再生を助けるタンパク質である「NGF(神経成長因子Nerve Growth Factor)」も発見している。NGFは、ダメージを受けた神経細胞の再生を促がし、神経細胞を成長させ、増やしてくれる。
 スタンリー博士は、この2つの成長因子(EGFとNGF)を発見したことが高く評価され、86年にノーベル生理学・医学賞を受賞することになる。この受賞によって、成長因子は一躍有名になり、世間の注目を集めるようになった。

 その結果、成長因子に関する研究はいろいろなところで行われ、現在の70種類の成長因子を発見するに至っている。成長因子のなかで「EGF」や「FGF(Fibroblast Growth Factor/線維芽細胞増殖因子)」はすでに化粧品の原料、医薬品の原料として使われ、アンチエイジング効果が期待されている。

(つづく)

 
(後)

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