2024年04月18日( 木 )

「ポケモンGO」祭りが頭上を吹き抜けていった任天堂(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

「ポケモンGO」はグーグルの社内ベンチャーが開発

hito ポケモンGOは、米国ゲームベンチャーのナイアンティック社が開発・配信・運営を行い、グーグルが配信インフラと地図情報サービスを提供する米国発のスマホゲーム。
 ポケモンGOの開発者は、ジョン・ハンケ氏。『Forbes JAPAN』電子版(2016年7月30日付)が、「ポケモンGOを作った男」として取り上げている。ハンケ氏は49歳というから、ゲーム業界では大変な高齢者である。

 ハンケ氏は、テキサスの信号が1つしかない田舎町で育った。幼少の頃からゲーム好き。カリフォルニア大学バークレー校でMBA(経営学修士)を取得。同級生とゲーム会社を立ち上げた。その後2000年に、地球上のあらゆる場所の衛星画像を閲覧できるソフトを提供する企業を立ち上げた。
 グーグルが04年、その企業を買収し、ハンケ氏はグーグルの社員に。地図サービスを担当するチームの責任者として、「グーグルアース」「グーグルマップ」を立ち上げた。
 ハンケ氏は11年、グーグルの社内ベンチャー、ナイアンティック社を設立。最初の位置情報ゲーム「イングレス」を開発したが、社内の評価は芳しくなかった。そこで有名キャラクターを使った位置情報ゲームの開発を目指すようになる。

 ハンケ氏のグーグルマップ時代の部下が、エイプリルフール用にグーグルマップを使ってポケモンを捕獲するサービスを考案。ポケモン社との商談は14年5月に成立。ハンケ氏は14年夏にポケモンGOの開発に着手。15年10月、グーグルが持ち株会社体制に移行するのにともない、独立してナイアンティック社として活動する。

「ポケモンGO」が大ヒットしても、任天堂の取り分はわずか

 ポケモンGOは、任天堂にどの程度の業績寄与があるのか。ナイアンティック社がグーグルの出資を受け15年10月に独立した際、任天堂とポケモン社が出資している。出資比率は公表されていない。任天堂の最新の有価証券報告書に、持分法適用会社として記載されていない。子会社でも持分法適用会社でもない。

 ナイアンティック社が配信するポケモンGOは、基本は無料だが、モンスターを捕まえるのに使うアイテムの販売で課金するビジネスモデル。利用者がこのアイテムを購入するたびに、ナイアンティック社の売上になる。

 スマホアプリの収益構造は、売上の30%をプラットフォーマー(グーグルとアップル)が取り、残りがナイアンティック社の取り分になる。そのなかから、ポケモンのライセンス料が支払われる。ライセンス料を受け取るのは、任天堂ではなく、ポケモン社だ。
 ポケモン社は任天堂が32%出資する持分法適用会社。持分法適用会社は連結子会社とは異なり、財務諸表を合算することはない。持ち分比率に応じて投資有価証券の勘定科目に、損益を反映させるように数値を修正するだけである。任天堂はライセンス料すべてを業績に加えることはできない。任天堂の利益が爆発的に膨らまない理由だ。

任天堂の足元の業績は赤字

 任天堂の16年4~6月期の連結決算は、売上高は31%減の619億円、営業損益は51億円の赤字(前年同期は11億円)、最終損益は245億円の赤字(同82億円の黒字)だった。
 ポケモンビジネスで任天堂が収益の柱に据えるのが、アプリと連動する機器「ポケモンGO Plus」の製造。「ポケモンGO Plus」は、時計のように腕にはめる。スマホの操作なしにポケモンを捕まえる。ポケモンGOにより問題となっている歩きスマホが軽減されるというのが謳い文句だ。

 「ポケモンGO Plus」は、業績予想に織り込んでいるので「業績予想の修正は行わない」とした。しかも、発売を従来の7月末から9月へ延期する。「ポケモンGOフィーバー」は、任天堂の業績回復の起爆剤になりそうにない。

(了)
【森村 和男】

 
(前)

関連記事