2024年03月29日( 金 )

世界を見据えた地元密着企業、善循環型の経営で躍進(後)

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霧島酒造(株)
代表取締役専務 江夏 拓三 氏

 霧島酒造(株)は、国民的ブランドとも言える芋焼酎「黒霧島」(黒キリ)を生み出した焼酎メーカー。黒キリは、焼酎ブームが終焉しても世間では変わることなく飲まれ続け、人々の心を掴んで離さない。宮崎県都城市で年商600億円を計上する同社は、「トロッと、キリッと」のキャッチコピーや、「白霧島」と横綱白鵬関のタイアップCMなど、ブランドイメージ定着に成功している。その立役者、代表取締役専務・江夏拓三氏に話を聞いた。

 ――黒キリは美味しくて飲みやすいし、手頃な価格で福岡でも大人気です。

kr2 江夏 大衆に納得できる味であることが重要で、黒キリはそこを押さえています。世の中にはなかなか手に入れることができない「まぼろしの焼酎」もたくさんあります。確かに飲みごたえがあって美味しい。しかし「まぼろしの焼酎」は値段が高すぎて、日常酒としてのハードルは高いかもしれません。家庭で飲む場合には、値段が手頃でどんな食事にでも合う黒キリを選ぶ。たとえば、大衆の好みをつかんだものに、ミツカンの「味ぽん」があります。鍋に焼肉に、大根おろしにといろいろな料理に合わせることができます。まぼろし化、特殊化すればいいわけではなく、大衆の心をつかんでいる味が最も受け入れられるのです。

 ――CMに横綱白鵬関を起用し、白霧島(白キリ)の知名度も上がりましたね。

 江夏 白キリは、80年以上の長きに渡って地元の人々に愛飲されてきた代表銘柄「霧島」を、リニューアルしたものです。「霧島」は、黒キリがヒットしたときに何度も都会へ持ち込んで販路の開拓に挑戦しましが、一向に売れませんでした。よく考えてみると、広く全国のお客さまが求めている味わいにかなっていないのかもしれません。「霧島」は、どっしりとしたコクがあり美味しいのですが、自己主張をし過ぎている。これをヒットさせるために、「白霧島」と名称を変更し、酒質全体を変えました。芋本来の甘みはしっかり残したまま、臭さをなくし高級感のある香りを出しています。横綱白鵬関のCM起用は、「白霧島」と白鵬関の「白」がはまり好評でした。今では、東京の数ある居酒屋に白キリを売り込むとき、黒キリのブランドと白鵬のポスターを持って行けば、商談がスムーズです。

 ――御社では、ビールの製造販売もされていますね。

 江夏 焼酎づくり90年の伝統と技術を身につけた霧島酒造の職人が、イギリスで醸造技術を習得し霧島ビールを誕生させました。世界には5つの大きなビールコンテストがありますが、その中の1つ「インターナショナル・ビアコンペティション」に出品し、金賞・銀賞を獲得しました。現在、若手社員5人が、ビール醸造から販売までトータルコーディネートしています。ビール工場も、今年4月にリニューアルオープンしました。研究費用や海外視察など、億単位で費用はかかりますが、若手に小さい単位で経営を任せ、どんどん世界に挑戦させていきます。

 ――来期の見込みと、人材採用について教えてください。

 江夏 現状で、焼酎事業単体の売上高は約600億円です。今後、ホールディングス全体では年間売上高1,000億円を目指します。雇用については、北海道から沖縄まで、全国各地から人が集まっていますが、地元出身者が多いです。当社には、陸上や重量挙げの選手で日本一を獲得した社員もいます。学業成績は元より、学生時代に何かに打ち込んできた人を積極的に採用しています。スポーツや文化活動、何れかの分野で日本一になるということは、努力や知恵、生活態度など全てに関わり、並大抵なことでは達成できません。現在、企画室の平均年齢は27歳で、会社全体は32歳です。全国から集まった優秀な人材と若返った組織で目標に向け邁進していきます。

(了)

<COMPANY INFORMATION>
代 表:江夏 順行ほか2名
所在地:宮崎県都城市下川東4-28-1
創 業:1916年5月
設 立:1949年4月
資本金:2,289万円

<プロフィール>
kr_pr江夏 拓三(えなつ・たくぞう)
早稲田大学商学部卒業後、1977年に霧島酒造(株)入社。87年に常務取締役、96年に専務取締役、2000年に代表取締役専務に就任し、現在に至る。その他、(有)霧島自然農園園長、都城青年会議所第24代理事長、日本青年会議所指導力開発委員長、ウェルライフ(株)取締役、(株)エナツ専務取締役、都城ケーブルテレビ(株)代表取締役と、多数の役職に就いている。

 
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