2024年03月29日( 金 )

マクドナルドがやっと黒字転換 身売り先はどこか?(前)

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 日本マクドナルドホールディングス(株)(以下、日本マクドナルドHD)のサラ・カサノバ社長は決算発表の席上、ポケモンGOとの提携効果を問われて「大変エキサイティングなコラボだ。ポケモンGOのプレーヤーの方に多く来店していただいている」と語った。2016年上半期の連結決算は黒字に転換。「ポケモンGO」は黒字回復の救世主として期待が集まっているが、安閑としてはいられない。今年最大の注目は、米国本社による日本法人の身売りであるからだ。

通期決算は10億円の黒字転換の見通し

mcdonald 日本マクドナルドHDが8月9日に発表した2016年1~6月期の連結決算は、売上高は前年同期比23%増の1,048億円、営業損益は4,700万円の黒字(前年同期は182億円の赤字)、最終損益は1億5,800万円の黒字(同262億円の赤字)。黒字に転換し、業績が回復に向かい始めたことを印象づけた。

 日本マクドナルドHDの最終損益は、14年12月期は鶏肉の使用期限切れ問題で218億円の赤字、15年12月期は異物混入問題で349億円の赤字だった。16年12月期は、品質問題の影響が薄れたことから、売上高は前期比16%増の2,200億円、最終損益は10億円の黒字転換を見込んでいる。とはいえ、最高益だった2011年12月期の133億円を大きく下回る。本格的な業績回復には、ほど遠い内容だ。

 収益が改善した要因は、店舗の大量閉鎖に踏み切ったことにある。経営規模は小さくなった。店舗数は2,917店(16年6月末)と17年ぶりに3,000店を割った。
新メニューの販売やイベントをきっかけに売上げは上昇。2016年上半期の直営店、FC店を含めた全店の売上高は前年同期比19.2%増の2,050億円、既存店売上高は23.2%増、全店客数も4.2%増と持ち直した。

ポケモンGO効果で、7月の既存店売上は26.8%増

 ハンバーガーチェーンを運営する日本マクドナルド(株)の7月の月次動向によると、既存店売上高は前年同月比26.6%増と8カ月連続で増加した。日本で開業45周年を記念した限定商品「1971 炙り醤油ジャパン」と「1955 スモーキーアメリカ」が好調だった。

 客数は9.8%増と7カ月連続で増加。約2,900店舗がポケモンGOのゲーム内で使えるアイテムをもらえたり、他のプレーヤーとポケモンを戦わせたりする拠点に指定され、来客店数を押し上げた。客単価も15.3%増と8カ月連続で上昇した。
 既存店売上高は今年に入って急速に回復したが、これは「前年同月比」という数字のマジックにすぎない。2014年7月の鶏肉の使用期限切れ問題、2015年1月には異物混入事件が起きて、売上高は激減していた。今年に入って回復してきたといっても、品質問題が起きる前より1割程度下回っている。完全に回復したわけではない。

 日本マクドナルドはポケモンGOによる集客効果で、元の水準まで戻すことを期待している。ポケモンGOはスマートフォン(スマホ)の全地球測位システム(GPS)の位置情報を利用し、現実世界そのものを舞台に、ポケモンを捕まえたり、バトルしたりできるゲームだ。 7月22日にポケモンGOの配信が日本でも始まり、全国各地でキャラクターを探す人が街に溢れ、ポケモン狂想曲は社会現象となった。
しかしスマホゲームは爆発的にヒットするが、冷めるのも早い。ポケモンGOブームは1カ月続けば御の字と冷ややかな声がある。8月の既存店売上と客数が、ポケモンGO効果を占う目安になる。

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(つづく)
【森村 和男】

 
(後)

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