2024年04月19日( 金 )

「IDOM」に社名変更したガリバーの不可解(後)

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買い取った中古車を、オークションで売り切るビジネスモデル

 羽鳥兼市氏は中古車販売を始めて、中古市場への不満を抱いた。中古車200台を展示して、1カ月60台売れれば御の字。残りの140台の価値は目減りしていく。

 〈車を購入いただいたお客さま方や中古車を売りたいというお客さまが、残った車の目減り分を負担せざるを得ない構図になってしまう。(中略)私はユーザーから不透明と思われている中古車販売業界を何とかしたかった。1985年に、福島県で買取り専門店を立ち上げました。お客さまから直接買い取って、オークション会場でセリにかけてみた〉

(前出・ドリームゲートのインタビュー)

 これが、ガリバーのビジネスモデルの原点だ。1994年10月、福島県郡山市で、買い取り専門店(株)ガリバーインターナショナルを設立。旧態依然とした中古車市場を、誰からも信頼される業界に改革を目指し、買い取り、販売につきものだった不透明なイメージを払拭し、「いつ、どの店舗でも公正な価格を表示してくれる」という安心感をつくり出すことに成功した。

car ここから快進撃が始まる。2000年、本社を東京都千代田区丸の内に移転し、東証二部に上場(03年、東証一部に指定替え)。買い取った中古車を、2週間以内にオークションで売り切る独自のビジネスモデルで、低リスク・中リターンを実現した。

 16年2月期の連結決算は、直営店・加盟店合計の503店。直営店の販売台数は18万9,675台。売上高は前期比35%増の2,100億円、営業利益は42%増の75億円、純利益は25%増の41億円。
 中古車買い取り専業の最大手の地位を、不動なものにした。

問われる、息子2人を社長にしたリスク

 羽鳥兼市氏は08年5月28日のガリバー社の株主総会で、息子の長男・由宇介氏(現45)と、次男・貴夫氏(現44)を同時に社長に就けた。由宇介氏は北海道東海大学卒で、貴夫氏は明海大学卒。社長が複数いる会社なんて聞いたことない。「非常識な人事だ」批判された。

 羽鳥兼市氏は、『日経ビジネス』オンライン(10年7月5日付け)のインタビューで、「社長2人制」は息子たちが言い出したものだと語っている。

 〈(息子たちの提案を受け)私は会社を永続させるためには、2人の息子を社長にすることが最善の事業継承である、と結論づけた〉。

 社長2人制と言っても、ワンマンの兼市氏がトップであることには変わりない。

 今回、羽鳥兼市氏が引退、社名をIDOMに変更。名実ともに「社長2人制」が始まる。

 だが、株式市場の反応は冷ややかだ。社名変更した直後の7月20日の株価は年初来安値の490円に下落した。10年来最高値の1,459円(16年3月30日)から3分の1に落ち込んだ。投資家たちは、社長2人制の先行きに不安を抱いているということだ。

(了)
【森村 和男】

 
(前)

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