2024年04月24日( 水 )

お洒落な静かなカフェで、女性たちの熱き戦い!

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 経済協力開発機構(OECD)が実施した学習到達度調査では、日本の高校生の理科と数学の学習能力で男女間に特異の差は認められていない。しかし、進学や職業を選ぶ段階で女子生徒が理工系を選択する割合は、日本はOECD諸国のなかで最も低い国の1つである。
 日本の研究者(技術者、大学教授など)などに占める女性の割合は、20%を大きく下回る。企業に所属する女性技術者となるとさらにその比率は下がり、その女性技術者のうちセキュリティ分野となるとまたさらに少なくなる。
 一方、今日本では量的に約8万人、スキル不足の約16万人を含めると総計約24万人のセキュリティ人材が慢性的に不足している。しかも、2020年東京五輪を控え、この解決は喫緊の課題である。とても男性人材だけで補える数字ではない。

“草薙素子”のような高度な技術力を持つ女性を発掘

 10月15日(土)、東京・青山の「Red Bull Studios Tokyo Hall」で、女性限定のCTF大会「攻殻機動隊 REALIZE PROJECT×SECCON CTF for GIRLS(※)」(主催は攻殻機動隊 REALIZE PROJECT、SECCON実行委員会/CTF for GIRLS、日本ネットワーク協会)が開催された。これは、日本における最大規模のCTF大会「SECCON 2016」の特別コラボ企画で、女性セキュリティエンジニアの発掘・育成を目的とするものである。

 同企画は2015年11月7日に神戸サンボーホールにて行われた、国内初の女性限定CTF大会「攻殻機動隊 REALIZE PROJECT×SECCON CTF for GIRLS」に続く第2回目で、今回、初の東京進出となった。

 『攻殻機動隊』(こうかくきどうたい)は、21世紀の科学技術が飛躍的に高度化した日本が舞台となる士郎正宗による漫画作品で、物語の主人公はウィザード級ハッカー「草薙素子」という女性である。
 この「攻殻CTF」では、草薙素子のような高度な技術力を持つ女性を、近い将来、日本から輩出することを目指している。

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開始1分前後で5人がネットワーク問題攻略

 当日、会場には首都圏を中心に38名の精鋭女性エンジニアが集合、開始1分前後で5人がネットワーク問題を解いて解説者を驚かせるなど、午後1時半の開始から午後4時半の終了時間ギリギリまで、レベルの高い熱戦が繰り広げられた。

 CTFとは「Capture The Flag」の略であり、情報セキュリティ分野の技術を競う手法の1つである。今回の「攻殻CTF」では、ネットワーク、暗号、バイナリ、フォレンジック、ウェブ、トリビアと6種類の分野に対し、それぞれ初級(100点)、中級(200点)、上級(300点)の問題が用意され、満点(3,600点)+ボーナスポイントで競技は行われた。

小・中学校あたりでインターネットが普及した

左から第2位 Dahlia さん、第1位 tecsk07 さん第3位 yuki さん<

左から第2位Dahliaさん、第1位tecsk07さん第3位yukiさん

 通常、CTF大会はチームごとに競われることが多いが、今回は女性だけの個人戦である。そのため、PC上ではレベルの高い熱戦が繰り広げられているにもかかわらず、会場はさながら、休日午後のお洒落な静かなカフェのようであった。
 見事、熱戦を制したのは、第1位 tecsk07さん(1,805点)、第2位 Dahliaさん(1,606点)、第3位 yukiさん(1,303点)の3名である。ちなみに、Dahliaさんは15年神戸大会の優勝者である。また接戦を物語るかのように、涙を飲んだ第4位と入賞第3位との差は、わずかに1点であった。

 入賞者3名はいずれもWebやプログラミンングの技術者で、大学は理系が2名、文系が1名であった。プログラミングなどに興味を持った動機は、「趣味、友達の影響で」「数学・理科が得意だった」「小・中学校あたりでインターネットが普及した」などである。さらに、セキュリティについては、「今、B2Cのサービスを担当しており、セキュリティを意識しないでは済まされない」と、その重要性を強く認識していた。

 大会終了後の交流会場には、CTF for GIRLS恒例の趣向を凝らしたスイーツが用意され、参加者は皆和気あいあいの会話を楽しんだ。

チームを組むことで学習が継続し易くなる

「CTF for GIRLS」恒例の趣向を凝らしたスイーツ<

「CTF for GIRLS」恒例の趣向を凝らしたスイーツ

 女姓だけのCTF大会について、竹迫良範「SECCON 2016」実行委員長は、次のように語る。
 「女性だけのCTF大会は『POWER OF XX』など韓国が先行しています。私も11年に訪韓、その決勝戦を視察しました。女子大のセキュリティサークルが主催、セキュリティ会社の女性チームなどが、会社のサポートを受けながら参加していました日本の場合は、まだ母集団が小さく、今は興味を持っている人を発掘している段階です。この後の交流会などで、参加者の皆さんがより懇親を深め、今度は別のCTF大会にチームで参加できるようになればと思っています。チームを組むことによって、学習が継続しやすくなるからです」。
 さらに、「SECCONとしても、11月の高校生向けの『サイバー甲子園』(18歳以下)など、今後もできるだけ窓口を広く開き、トップを目指せる人材の発掘に尽力していくつもりです」と続けた。

 日本の年末・年始は、セキュリティイベントのシーズンである。今月20‐21日には、日本発のセキュリティ国際会議「CODE BLUE」が開催する。SECCON 2016の地方大会も7月17日の九州大会を皮切りに、横浜大会(8.26)、大阪大会(10.2)と順調に駒を進め、後は福島大会『サイバー甲子園』(11.12)を残すまでになった。その後は、オンライン予選(12.10‐11)を経て、決勝大会(17年 1.28‐29)に向かうことになる。

【金木 亮憲】

※CTF for GIRLS:情報セキュリティ技術に興味がある女性を対象に、気軽に技術的な質問や何気ない悩みを話し合うことができるコミュニティを作ることが目的で結成。コミュニティ形成の一環として、女性同士で情報セキュリティ技術を教え合うCTFワークショップや、その他の女性向けCTFイベントを開催している。

 

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