2024年03月28日( 木 )

創業家の乱!昭和シェルとの合併を延期させた出光創業家の面々(後)

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創業家の代理人、浜田卓二郎弁護士

pen 創業家の影のキーマンは、昭介氏の妻の千恵子夫人である。昭介氏が、日本航空(JAL)の客室乗務員だった千恵子氏を見初めて結婚したのは、有名な話。千恵子夫人が昵懇(じっこん)にしているのが、JALの国際線客室乗務員の後輩の浜田マキ子氏。マキ子氏は、かつて衆院選や東京都知事選に出馬し、美人候補として世間の耳目を集めた人物だ。
 千恵子氏とマキ子氏の交流は続き、千恵子氏の長女の佐千子氏(出光美術館理事)とも一緒に、「リラの会」という政財界のセレブ女性の親睦会を開いている。

 その縁で、千恵子氏の夫である昭介氏は、マキ子氏の夫の浜田卓二郎氏を紹介された。浜田氏は東京大学法学部を卒業、大蔵省(現・財務省)に入省。80年に衆院選に初当選して政界に転じた。自民党や新進党を渡り歩き、1988年の消費税導入の際には新税制を国民に説明するスポークスマンをやっていた。2004年から弁護士として活動。14年から出光興産の筆頭株主である創業家の資産管理日章興産の代表取締役副社長に就いた。

 以後、浜田氏が創業家の代理人として、出光興産と昭和シェルの合併反対の論陣を張る。浜田氏のガードが固く、経営陣も全国出光会の代表も昭介氏と会えないでいる。

 ひとクセもふたクセもある浜田卓二郎=マキ子夫妻が、出光創業家を代弁する。全国出光会が創業家に叛旗を翻して、合併に賛成の立場を表明したのは、代理人の浜田氏に対する拭いがたい不信感がある。

創業家には強力な応援団がついた

 創業家側には、強力な応援団がついている。創業家側と経営陣による最初の話し合いが7月11日、東京・丸の内の出光美術館で開かれた。それを報じたFACTA(16年8月号)は、昭介氏の妻、千恵子氏と卓二郎氏の妻マキ子が連れ添っているのを目撃したと書く。目を引いたのは、次のくだり。
 〈千恵子氏は翌日も、出光美術館で目撃されている。この日の同伴者は佐三氏をモデルにした小説『海賊と呼ばれた男』の著者、百田尚樹氏だった〉

 もう1人の応援団は、東亜燃料工業(株)(現・東燃ゼネラル石油(株))の元社長で、日本銀行の政策委員会審議委員も務めた中原伸之氏だ。官主導で、JXホールディングス(株)=東燃ゼネラル石油と、出光興産=昭和シェル石油の経営統合が進められていることに、真っ向から反対している。
 週刊東洋経済(16年2月6日号)のインタビューで、官主導で業界の寡占化が進むことに警鐘を鳴らした。〈1980年代後半には私と出光興産の出光昭介社長の2人で、石油審議会で自由化を主張して、石油業法は撤廃に追込まれた〉と語る。官の統制に反対する同志だった昭介氏の応援に、中原氏は馳せ参じたわけだ。

 さて、経営陣はどういう手を打つか――。昭介氏は89歳とかなりの高齢。亡くなった後、2人の息子、正和氏と正道氏と話し合って解決したいハラのようだ。その場合は、代理人の卓二郎氏と、昭介氏の妻の千恵子氏には席を外してもらう必要があるが、これは難題。先行きは見えてこない。

(了)
【森村 和男】

 
(前)

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