2024年04月20日( 土 )

TPP暴言・山本農水相辞任問題を報じない腐敗メディア

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 NET-IBでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、山本農水相の自民党衆院議員のパーティーでの発言を受けて、野党4党が山本農水相の辞任を求めている問題で、この件をまったく報じないメディアについて言及した、10月21日付の記事を紹介する。


 臨時国会におけるTPP審議に関する重大情報をメディアがほとんど伝えない。

 山本農水相が衆議院議院運営委員会委員長の自民党衆院議員佐藤勉氏のパーティーに出席して、「野党が必ず強行採決するだろうと総理に質問するが、強行採決するかどうかはこの佐藤勉さんが決める。だから私は、はせ参じた」と発言したことについて、野党4党が山本農水相の辞任を求めている。

 自公と維新は4野党との合意を得ぬまま、民進、共産委員が退席するなかで衆院TPP特別委を強行し、地方公聴会日程などを勝手に決めた。野党4党は山本農水相の辞任を求める方針を確認して国会審議を拒絶している。

 国会は国権の最高機関である。その国会で最重要の争点になっているのがTPP批准案である。この最重要議案について、政府の中心閣僚が重大な問題発言を行い、国会審議が止まっている。報道機関として、この問題をトップで扱い、国民に情報を伝えることは、基本的責務である。
 それにもかかわらず、NHKは夜9時の定時ニュースでこの問題を報道しなかった。テレビ朝日報道ステーションもこの問題を報道しなかった。明らかに重要性が劣後する話題に多大の時間を割り当てて、この重大問題を国民にまったく知らせようとしない。
 安倍政権が報道機関に対して、この問題を報道しないように「指導」を行っている疑いが濃厚である。

 野党の要求は筋が通っている。TPPは日本国民の未来に重大かつ深刻な影響を与える最重大問題である。国会で十分な論議を尽くすべきことは当然である。それにもかかわらず、自民党側は一定の審議時間が経過したら、実質的な審議がまったく行われていなくても、「数の力」で批准案を強行可決してしまうとのスタンスを見え隠れさせている。
 こうした横暴な政治に対して、主権者国民の意思を受けた野党が反発するのは当然のことである。

 9月29日には、衆議院TPP特別委員会理事に任命された自民党の福田照衆院議員が、同氏が所属する二階派の会合で、「この国会ではTPPの委員会で西川(公也)先生の思いを、強行採決という形で実現するよう頑張らせていただく」と発言して同委員会理事ならびに委員を更迭された。
 福田議員の強行採決発言と更迭について安倍首相は、10月17日の衆院TPP特別委の答弁で、「我が党においては(1955年の)結党以来、強行採決をしようと考えたことはない」「円滑に議論し、議論が熟した際には採決する。民主主義のルールにのっとっていくのは当然のこと」「この考え方とは相いれない発言であったから(福井氏)本人が辞職した」と述べている。

 山本有二農水相の発言は、安倍首相の上記国会答弁の翌日夜に飛び出した。「強行採決するかどうかはこの佐藤勉さんが決める。だから私は、はせ参じた」の発言は、強行採決を決定するのは佐藤勉議院運営委員長だから、その佐藤氏に強行採決をお願いするために「はせ参じた」という意味にしか解釈できない。
 山本農水相は「強行採決」を求める発言を示したことになる。

 安倍首相は10月17日の国会答弁で、「我が党(自民党)は結党以来、強行採決をしようと考えたことはない」から、「強行採決を形で実現するよう頑張らせていただく」という福井照衆院議員の発言が「この考え方とは相いれない発言であったから(福井氏)本人が辞職した」と述べている。
 したがって、佐藤勉議運委員長に対して強行採決を求める発言を示した山本農水相も「この考えと相いれない」ことは明白である。

 山本農水相が辞任するべきことは、安倍首相の国会答弁から直ちに導かれる結論であると言える。普通の状態であれば、メディアは山本農水相発言を繰り返し放映し、山本農水相辞任が実現するまで大々的な報道を展開するところだ。
 こうしたマスメディアの報道を権力の力で封じ込めているところに、安倍政権のいかがわしさ、非民主性がくっきりと浮かび上がる。主権者は安倍政権の暴走を糾弾する世論を一気に拡散するべきである。

 「無間地獄行きのバス」であるTPPを強行批准することを絶対に許すわけにはいかない。

※続きは10月21日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第1571号「自民党TPP批准案月内衆院通過阻止が民進党最低責務」で。


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・植草一秀の『知られざる真実』

 

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