2024年04月20日( 土 )

再生エネルギー普及伸び悩む、新電力は特徴で勝負せよ!(中)

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どこまで足かせをつけるのか

taiyoukou 政府・電力会社は、どこまで太陽光の発電の普及を阻害しようとしているのか、と怒りがわいてくるかもしれないが、これだけではないのである。太陽光発電の、とくに大規模なもの、メガソーラー発電などの事例でのハードルを引き上げたのだ。
 太陽光発電に限らず、発電事業は、その出力によって電気技術者を配しなくてはならないなどのルールがある。出力50kW以上の場合は高圧接続となり、その場合は追加設備(高圧受電設備など)が必要になるのである。それゆえ、事業者は知恵を出して広い敷地を分割し、小さな発電施設をたくさん用意することで低圧での接続をするようになった。これがみなし高圧である。みなし高圧は「低圧重複連携」とも言い、低圧での接続によるメリットを享受できる仕組みとして広く普及した。このみなし高圧が2014年3月末の省令改正によって禁止された。つまり、大規模な開発に関してハードルを高くしたのである。背景には、本来高圧で申し込むべき案件であるため安全規制が守られなくなることや事業開始遅延などの問題もあるが、この規制によってやる気を削がれた事業者は多い。

 再生可能エネルギーによる発電事業は固定価格の低下、出力制御の問題、みなし高圧の禁止。こういったことを背景に、太陽光発電には重い足かせをつけられたのである。つまり、旨みが薄まってしまったのだ。これが近年の大型再生可能エネルギー施設普及の阻害要因となっている。それゆえ今、太陽光発電関連事業者は厳しい風を受けることとなったのである。再生可能エネルギーによるエネルギー革命は、どうやら仕組みによってつぶされる可能性が出てきている。

電力市場の完全開放

 もう1つの潮流、新電力の電気事業参入について見てみよう。日本ではこれまで、電力は電力会社(一般電気事業者)によって供給されてきた。九州ならば九州電力1社が電気の供給事業を担ってきた。それゆえ電気料金は総括原価方式と呼ばれる算定方法で定められてきた。総括原価方式とは電力会社で発送電にかかる費用の総額を算出して原価を定める方法。今回の電力自由化は、競争原理を持ち込むことで適正な電気料金にしようというもの。新電力というのは、旧来からの電力会社に対して新しい電力会社という意味で、電力小売自由化部門の新規参入者(PPS)を指す。

 電力の小売自由化は段階的に進められてきた。2000年3月、まずは特別高圧帯で自由化が実現された。特別高圧は工場や大規模な商業施設、大きなオフィスビルなどで用いられる電圧帯。次いで04年に中小規模のビルや小規模の工場などで用いられる高圧帯が解放され、自由化の領域が拡大された。そして16年4月からは一般家庭などに送られる低圧帯が自由化され、電力市場はすべて解放されたことになる。さまざまな企業がそれぞれの思惑をもって電力市場に参入、福岡県下では16年7月現在、17社が新電力として営業を展開している。

 大きく区分けすると石油やガスといったエネルギー関連の事業に以前から取り組んできた企業、太陽光バブルに乗って再生可能エネルギー事業に取り組み始めた企業、通信会社といった企業が目立つ。

 そんななか、福岡県で異彩を放つのが自治体による電力小売参入だ。みやま市のみやまスマートエネルギー(株)である。自治体が市内の市関連設備に電力を供給すると同時に市民にも電力を買ってもらおうという仕組みである。市のPPSから電力を買えば、市民サービスも充実していく手法をとった。もちろん、電気料金は従来よりも安く設定されている。このみやま市の電力供給の仕組みは2015年にグッドデザイン賞を受賞している。しかし、第三者から見ると電力事業者、消費者ともにメリットがあると思われる仕組みであってさえ、普及にはなかなか踏み切ってもらえないという。

 みやま市に取材したところ「一般家庭などでは、せいぜい数百円程度の価格メリットが生まれるだけ。そのために九州電力から乗り換えるほどのモチベーションにはつながっていないようだ」と苦戦している現状について率直に答えてくれた。
 これはみやま市だけの事情ではない。左頁の表を見てもらいたい。7月時点で新電力による低圧帯での電力供給はゼロが並んでいることがわかる。各社まだまだこれからといった状況なのである。

(つづく)
【柳 茂嘉】

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