2024年03月28日( 木 )

RIZAPグループの正体(前)

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大ブレークしたRIZAPグループとは、どんな会社か?

 「結果にコミットする」のキャッチコピーと、ダイエットのビフォーアフターを印象付けるテレビCMでブレークしたパーソナルトレーニングジムRIZAP(ライザップ)。このライザップを傘下にもつ健康コーポーレーション(株)は7月1日、商号をRIZAPグループ(株)に変更。札幌証券取引所の新興市場、札幌アンビシャスから東京証券取引所への上場を目指す。同社に強力な援軍が現われた。伊藤忠商事(株)の岡藤正広社長である。

ファミリーマートがRIZAPと共同開発したパンを売る

 伊藤忠商事の岡藤正広社長は、「日経ビジネスオンライン」(16年11月7日付)のインタビューで、ライザップのファンになった体験談を語っている。

 〈去年11月に空腹時血糖値が140mg/dlぐらいあって、医者から食事療法をしなさいと言われた。それで「えらいこっちゃ」と今年1月末から本格的にライザップに通い、糖質制限を始めたんや。ライザップで大事なのは運動よりも食事療法で、その食事療法というのはいわゆる糖質制限なんです。これが効くと思うんだよな。
糖質制限を始めたたら、2月にもうぽーんと下って100 mg/dl以下になった。空腹時血糖値の正常値が100 mg/dl未満らしいから、あっという間に正常に戻ったわけだ〉

 以来、糖質制限のファンになった。取引先との会食の席では、最初にライザップの話をする入れ込みようだ。
 さらに、伊藤忠商事グループの3社はRIZAPと健康分野で業務提携した。第1弾として11月下旬からライザップと一緒に開発した糖質を抑えたパンやデザートを全国約1万8,000店のコンビニエンスストア、(株)ファミリーマートで売り出す。
 うさん臭い会社と見られていたライザップは伊藤忠の後ろ盾を得た。ホップ、ステップ、ジャンプの大跳躍となるか。

創業者は浮き沈みが激しい半生

business 創業者の瀬戸健氏(38)は、浮き沈みが激しい半生を湯谷昇羊氏の『不屈の経営者列伝』(ダイヤモンドオンライン11年2月17日付)で語っている。要約する。

 福岡県北九州市出身。福岡県立北筑高校時代、学年で400人中399番という成績の落ちこぼれの劣等生。一念発起して猛勉強、明治大学に入学。学費を稼ぐためにパソコンとその教材を売る営業のアルバイトをやった。抜群の実績を上げ営業に向いていると分かった。

 03年4月、24歳の時、健康コーポレーションを起業。最初は大豆の胚芽部分を濃縮したサプリメントの販売。通販番組に出品したが、さっぱり売れなかった。おまけに付けていたクッキーの評判がよかったので、豆乳とおからのクッキーを実家(北九州市)のパン屋で焼いた。デパートの食品売り場の催事コーナーで売らせてもらったが、その程度では食っていけない。妻の実家に居候。生活費は1カ月1万円だった。
 そのとき、ひらめいた。ダイエットを前面に出したクッキーをネットで販売しよう。04年1月から「豆乳クッキーダイエット」をネット通販で売り出した。これが大ヒット。06年5月、札幌証券取引所の新興市場アンビシャスに上場。上場で得た資金は企業買収と広告宣伝費に当てた。広告費は湯水のごとく使った。07年に広告費を69億円投じた。その効果で売上高は前年比4倍の100億円を上げた。
そんな無茶苦茶な経営が長続きするわけはない。広告費がなくなり、豆乳ダイエットブームは一瞬にして終わる。09年には売り上げは29億円に激減。株価は1株4円に下落。倒産の崖っぷちに追い込まれた。
 このとき神風が吹く。家庭用超音波美顔器「エステナードソニック」のヒットだ。これで一息をついた。通販商品は一時的に売れても、すぐに下火になる。ネット通販で売る種を見つけるために、次々と企業を買収していった。

(つづく)
【森村 和男】

 
(後)

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