2024年04月26日( 金 )

中国経済新聞に学ぶ~中国と欧米の貿易戦争 一触即発

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 2016年12月11日は中国WTO加盟15周年にあたる。『中国WTO加盟議定書』の第15条によれば、WTO加盟国は対中国反ダンピングの代替国適用を期日通り中止し、中国は自動的に市場経済の地位を獲得することになっている。しかし今年、EU、アメリカ、日本は前後して、中国に市場経済の地位を与えることは認めないとする声明を出した。日本政府は12月8日、中国を「市場経済国家」と認めないと正式に発表した。これに対し中国政府は12日、WTOに対し日本と欧米国家を提訴し、国際貿易戦争の幕が切って落とされた。

office2-min 15年前、中国はWTOの第143番目の加盟国となった。それから15年後、中国は世界経済の舞台の中央に立ち、世界経済の発展に大きく貢献したことは誰の目にも明らかだ。
 中国の官報によると、01年の中国の世界のGDPに対する寄与率は0.5%、15年は24.8%まで上昇したという。同時に世界のGDP成長率の寄与率も0.03ポイントから0.6ポイントに上昇した。
 WTO加盟から15年たって、中国経済は大きな成功を収めた。現在中国は世界第二の経済大国となり、世界第一の貿易国、世界第一の外資誘致国、世界第二の対外投資国となった。中国は3年連続で世界第一の貨物貿易国となり、世界120あまりの国と地域の最大の貿易パートナーとなっている。
 公式の統計によると、01年中国の輸出入総額は5,100億ドルだったが、15年には3兆9,600億ドルと8倍に増加した。そのうち2015年の中国輸出総額は2兆2,765億7,000万ドルで、2001年の約7.6倍に増加し、輸入額は1兆6,820億7,000万ドルと約6倍に増加した。
 中国商務部によると、今後5年で中国の輸出入総額は8兆ドルに達し、利用外資総額は6,000億ドル、対外投資総額は7,500億ドルに達するという。さらに海外旅行者は延べ7億人に達し、世界に多くの発展の機会をもたらすという。

 中国は世界経済に大きな貢献をしているが、日本や欧米諸国は、中国は「市場経済国家」には程遠いとしている。
 日本の経済産業省は8日、中国のWTOにおける地位に関して、引き続き中国を「市場経済国家」とは認めず、また日本は不当なダンピングにたいして関税を高くする「ダンピング防止関税」の体制を継続すると表明した。安倍首相は5日の参議院TPP特別委員会で、中国国有企業の「不当ダンピング」行為は市場の秩序を害すると非難した。とくに「中国の鉄鋼産業の過剰生産により、低価格で海外に販売していることで、世界の鉄鋼企業及び関連企業に大きな損害を与えている」と述べた。
 アメリカ商務省のペニー・プリッカー長官は、11月中国政府要人に対し、中国を市場経済国家として認めるには「時期尚早」であると述べた。長官によると、市場経済の地位は自動的に取得できるものではなく、『議定書』の反ダンピング条項は依然として有効だとも言っている。アメリカ商務省は「アメリカは中国の国家主導の経済による不公平に対し依然として憂慮している。例えば鉄鋼やアルミニウムなどの産業に広くみられる過剰生産、および多くの産業や部門の国家所有制である」という。声明はさらに、中国では市場原理に従った十分な改革がないことで、アメリカは引き続き「他の」方法でダンピング度を算定するという。
 アメリカ連邦下院歳入委員会のポール・ライアン委員長は「中国は自分によって有利なことを求めるが、義務を履行することは考えない。このような勝手な行動は貿易では通用しない。中国はたびたびWTOの義務に違反している」と手厳しい。さらに「中国はずっと悪意を持ってダンピングを行うが、これは競争相手をつぶすばかりか、すべての産業を消滅させる。太陽光発電と鉄鋼がよい例だ。中国は、市場経済とはそぐわない、世界の需要を超える生産をためるべきだ」という。
 もっとも注目されるのはアメリカ大統領に選出されたトランプがアイオワの集会で語った次の言葉だ。「彼ら(中国)はゲームの規則を遵守しない。今こそ(遵守することを)知るときが来た」。日本や欧米の非難に対し、中国対外経済貿易大学の薛栄久教授は「中国は規則を遵守している。しかし欧米諸国の承認が必要だ。欧米諸国は自分に問題がありながら中国は不公平だという。欧米の経済の不調は自身の管理や経営の不足である」と抗議する。
 北京大学国家発展研究院副委員長の余淼杰氏は「15年中国の97%の商品とサービスの価格は市場により決定したものだというデータがある。非公有経済の国内総産額は60%を超えており、国有経済の比重より高い。今年1~11月、中国の民営企業の輸出は全輸出の46.1%を占めた。中国の対外輸出貨物貿易の総額中、輸出価格の大部分は非公有企業が国際市場価格により決定したものである。ここ数年で対外開放投資領域を大幅に拡大した。日本は中国を市場経済の地位を認めないが、これこそ保護主義だ」と言っている。
 大統領選の活動のなかで、トランプが中国の商品に45%の関税をかけるなどの政策におよんだことに対し、ノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・スティグリッツは、「もし中国がアメリカからの輸入商品に対し高額な関税をかけたら、アメリカは輸出入が委縮し、国内物価は上昇し、経済は停滞し、失業率が高くなるだろう。もし貿易戦争が起こったら、アメリカ経済は最大の敗者となる」と警告する。

 中国商務部は12日、WTOに紛争解決手続きによる協議を正式に要請したことを明らかにした。商務部の報道官は「中国はWTOに提訴し、自国の合法的な権利と国際貿易ルールの厳粛性を守ることは、合理的かつ合法的である」と宣言した。中国はすでにEUやアメリカに個別に折衝を要求し、さらにWTOの専門家に採決の進行を求めた。これは中国がWTO加盟15周年を迎えた二日目、提訴を開始したことを意味する。日本と欧米、とくにトランプのアメリカは間違いなく、中国のこの訴訟に無関心ではいられない。
 中国と欧米の貿易戦争は17年に火ぶたが切られる。日中間の貿易摩擦も避けられない。

 

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