2024年04月24日( 水 )

慰安婦「圧力」外交の安倍政権「学級崩壊」の韓国社会を衝く(後)

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衝撃を隠せない韓国メディア

 安倍官邸による「対韓圧力」の効果は十分にあった、と見るべきだ。韓国側の本音を語る2つの新聞論調を、ここでは紹介する。

 右派新聞「朝鮮日報」社説(9日付け)。

 「安倍首相は8日、テレビ番組に出演した際「(慰安婦合意は)政権が変わっても実行されなければならない」と述べ、また、米国のバイデン副大統領は「韓米両政府が責任を果たしていくことが重要だ」と発言した。つまりこの問題で米国は事実上、完全に日本の側にあることがわかる。長嶺安政・駐韓日本大使は、表向きは『一時帰国』としているものの、いつ韓国に戻るかは明言していない」

 左派新聞「ハンギョレ」東京特派員によるニュース分析(9日付け)。

 「問題は、韓国の次期政権が全面対決を選んでも、韓国の勝算は高くない点だ。中国の浮上を押さえ込むために、日本の軍事的役割を拡大する方向で米日同盟を強化した米国の視線が、日本側に傾いたと見られるためだ。こうした状況で韓国が交渉力を高めるには、歴史問題については韓中が歩調を合わせて日本を圧迫しなければならないが、これは新しく登場するドナルド・トランプ行政府を刺激する逆効果を産む可能性が高い」

 つまり、新聞論調は左右とも「韓国不利」を認めざるを得ない状況なのだ。将棋で言えば、韓国側は慰安婦問題で、逆転負け・投了寸前だ。すでに棋士(大統領)も不在なのだから、勝負にならない。

「パーフェクト・ストーム」に震える韓国

 それにしても韓国の「学級崩壊」ぶりは、見るも無残なものがある。政治は周知の通り(大統領不在)だが、経済も酷い。景気指数は今年の第1四半期で68まで急低下した。金融危機当時に匹敵する数値だ。

 韓国経済研究院の権泰信院長は8日、「消費、投資、輸出という3本の成長の柱が崩壊する『パーフェクト・ストーム』が到来している」と指摘した。

 「朝鮮日報」社説は「駐韓日本大使は、いつ韓国に戻るか明言していない」と不安がる。これは薬が効きすぎたというべきだろう。

 「一時帰国」は、よほどのことがない限り、「一時的」である。李明博・前大統領が竹島上陸という暴挙を犯した時、駐韓日本大使が帰国した。しかし、12日後にはソウルに戻った。近隣国との外交関係は通常そういうものだ。

 9日の共同通信は「日韓外交筋によると、帰国期間は数日から1週間程度とみられる」と報じた。しかし、今回は「トランプ要因」という巨大変数がある。日韓関係の打開のカギは、米国だ。トランプ米政権の誕生は今月20日だ。それまでは日韓関係は動かないだろう。

(了)

<プロフィール>
shimokawa下川 正晴(しもかわ・まさはる)
1949年鹿児島県生まれ。毎日新聞ソウル、バンコク支局長、論説委員、韓国外国語大学客員教授、大分県立芸術文化短期大学教授(マスメディア論、現代韓国論)を歴任。国民大学、檀国大学(ソウル)特別研究員。日本記者クラブ会員。
メールアドレス:simokawa@cba.att.ne.jp

 
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