2024年04月25日( 木 )

「エンタメ家具店」として異色の再生へ~(株)河村家具

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 家具小売業界を取り巻く環境は厳しい。イケア・ニトリが二強となり全国シェアを拡大するなか、ネット販売を行うメーカーも増え、競争は激化するばかりだ。安さ、ブランド、無店舗のネット販売と家具店がそれぞれの活路を見出そうとするなか、「エンターテインメント」と家具店の融合を目指す(株)河村家具の経営に注目した。

エンターテインメントと家具店

kagu 創業から107年目を迎えるカワムラ家具。「カワムラの家具も一緒にお嫁入り」というキャッチフレーズで婚礼家具のセット販売を主力に業績を伸ばし、一時は6店舗を構え、業界地場トップクラスに躍り出ていた。しかし、時代とともに生活様式は変化し、それまで家具販売の主力であった「お祝い市場」が縮小していった。売上のメインとなる婚礼家具の需要が減る中、近隣に全国展開の大型家具チェーン店が乱立。競争は激化し、業績が伸び悩んだ結果、同社は2001年に民事再生の道を選んだ。

 05年には民事再生手続が終結し、負債も全額完済したが、依然として家具販売業を取り巻く環境は厳しいまま。そこで、婚礼家具から「ランドセル」や「学習机」の販売に力を入れ、学童に特化した販売戦略に出る。その顧客獲得の手段として同社が行ったのが「ものまね紙芝居」という、同社代表である河村和範氏が自ら得意のモノマネで紙芝居をするというサービスだ。

 幼稚園や保育園で公演し少しずつ顧客を獲得していくが、転機が訪れたのは2011年。テレビのバラエティ番組『世界1のSHOWタイム~ギャラを決めるのはアナタ~』(日本テレビ)に出演し、全国ネットでKAWAMURA BAND(河村和範代表によるサザンオールスターズのコピーバンド)が演奏を披露。「カワムラ」と社長の顔が全国に知れわたることとなった。この機を逃すまいとカワムラ家具は社長の顔を前面に打ち出した広告戦略に出る。その戦略が功を奏し、カワムラ家具は婚礼家具、学習机、そして「KAWAMURA BANDのカワムラ家具店」として3度目の転換期を迎えた。

 しかし、KAWAMURA BANDリーダーの河村和範氏の年間公演数は90ステージ。それに加えてモノマネ紙芝居が40公演。全国で活動を行っており、ほとんど会社経営に携わる時間はない。そのため、実際の経営を管理しているのは従弟である現場責任者の河村知宏氏だ。そして河村和範氏の弟である幸宏氏が同社の専務と、所属事務所「(株)KAWAMURA BAND OFFICE」の代表取締役社長を務め、バンドと家具店をつなぐ役割を果たす。一見同族に頼り切った経営に思えるが、あくまで和範氏に求められているのは「経営者」としてではなく「広告塔」としての集客力なのだろう。

 現実にはどの程度の相乗効果があるのか計れないのが実情だ。それでも、エンターテインメントという他にはない強みを持つカワムラ家具。知名度を生かしどのような経営を行うかに注目が集まる。

<COMPANY INFORMATION>
(株)河村家具
代 表:河村 和範
所在地:福岡市西区福重4-3-8
創 業:1910年05月
設 立:1948年09月

 

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