2024年04月26日( 金 )

就任式まで、あと数日。トランプ次期大統領の命運や如何に?(中)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

国際政治経済学者 浜田 和幸 氏

 現時点では、祝賀行事に参加する意向のトランプ支持者の80万人に対して、何と100万人を超えるデモ参加者が「首都機能を麻痺させよう」とさまざまな作戦を準備していると見られる。そうした動きの旗振り役となっているのが、「1月20日粉砕」「ファシズム断固拒否」という名の反トランプ集団に他ならない。他にも、女性団体から同性愛者の組織まで、多様な集団がトランプ大統領の就任を阻止しようと動いている。

 彼らの呼びかけに応じて、1月14日から20日まで、ワシントンでは各地から集まるアンチ・トランプの活動家が、徐々に反対運動をエスカレートさせつつある。加えて、イスラム過激派など、テロ集団の動きも予断を許さない。こうした危険な異常事態を前にして、警備の最高責任者をクビにするというのは、実に前代未聞の出来事である。

usa2 CIAをはじめ諜報関係者からのブリーフィングを拒否したトランプ氏は、各々の情報機関を敵に回した感が強い。そのため、先の大統領選挙でハッカーを使って妨害工作を行ったと国防総省が決めつけたロシアのプーチン大統領との関係改善や強化を模索するトランプ新大統領に対する嫌がらせのオンパレードである。民主党上院のシューマー院内総務に言わせれば、「諜報機関をコケにするような発言をしていれば、1月20日の就任式後の日曜日から命を狙われることになるだろう」。つまり「ケネディ大統領の二の舞になるぞ」と警告を発しているに等しい。

 こうした一触即発の事態を受け、あの有名な映画監督マイケル・ムーア氏も「前代未聞の大統領就任式典阻止行動」をドキュメンタリー映画に仕上げようと動き出した。商魂たくましい限りだ。ムーア氏の見立ては、「1月20日の式典阻止活動はその後の100日間に及ぶ抵抗運動の始まりに過ぎない」というもの。となれば、トランプ大統領を認めるか、認めないかの対立は長期戦になる可能性もありうる。
ワシントン各地でデモや集会が繰り返され、場合によっては暴徒化する恐れが日に日に強まっているわけだ。警察や特殊部隊が全力を挙げて阻止しようと、事前の予行演習を繰り返しているようだが、どんな事態になるのか、不安材料は拭いきれない。

 治安当局者曰く「大雪になってくれないかな。そうすれば、デモ参加者も少なくなるに違いない」。大雪頼みの警備とは情けない限りだが、本音であろう。言うまでもなく、こんな物騒な大統領就任式典はかつてなかったことだ。大方誰もが本気で想定しなかったトランプ政権だからこそ、その先行きには相当な混乱や不測の事態が予想されるのも当然かも知れない。

 トランプ氏本人はそうした意外性を楽しんでいるフシも見られるが、どのような就任式となるのか、世界中の目が注がれていることは間違いない。その晴れ舞台でどのような演説や行動で存在感を示し、「アメリカ復活への道」をアピールするのか。「ケネディとレーガンの2人の就任演説を参考にする」と言うが、アメリカ国民を共通の目標に向けて奮い立たせることができるのだろうか。大いに期待したいところだ。

(つづく)

<プロフィール>
hamada_prf浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。
今年7月にネット出版した原田翔太氏との共著『未来予見〜「未来が見える人」は何をやっているのか?21世紀版知的未来学入門~』(ユナイテッドリンクスジャパン)がアマゾンでベストセラーに。

 
(前)
(後)

関連キーワード

関連記事