2024年04月26日( 金 )

マンション販売、駐車場事業が牽引するも、その他の事業が不振(後)

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取引先との馴れ合い、業績へのプレッシャーが要因

 調査委員会の調査報告書によれば、トラストネットワークは、他のグループ会社と異なり不動産事業を主力としていたことから不動産実務に長けた経理担当者を置いていたほか、50万円以上の広告宣伝費の承認に関しては子会社社長の決裁(2016年8月からは親会社への報告事項であることが加わる)となっていたという。

20170213_017g トラストネットワークはウォーター事業のリスティング広告や検索エンジン最適化、アフィリエイト、ラジオ、ダイレクトメールなどの広告宣伝に関する企画から制作までを1社に一任していた。報告書で「甲社」とされた同社への支払いは末締めで甲社から広告宣伝費の実績報告を受け、請求書を交付。翌月20日までに支払うというもの。
 しかし、15年12月中旬に同月の広告宣伝費が予想以上の金額になる見込みと認識。上半期の業績悪化を懸念してトラストネットワークは甲社に「調整」を依頼したという。これにより、12月の広告宣伝費として処理すべき2,300万円について翌月に繰り延べることを両社が合意。トラストネットワークの担当者(当時)は「一事業年度中に処理できるのであれば大きな問題ではないと認識していた」という。調査委員会によれば、甲社の経営がトラストネットワークに依存していたことから、「甲社さえ納得すれば」という意識を生んだことや業績に対するプレッシャーが不適切会計処理につながったと考えられると結論付けられている。

 これらの不適切会計処理問題を経て、「取引先との馴れ合いによる不正」防止のため、コンプライアンス体制の強化などを掲げ、トラストネットワークの早川社長(当時)の退任やトラストホールディングスの会長および社長、専務の報酬月額30%減1カ月などの処分が行われた。その後、ウォーター事業では設備投資計画の中止を発表。ウォーター事業ではパウチ商品およびペットボトル商品の販売を主力としていたが、本件はパウチに限るもの。ペットボトル商品はこれまで通りの仕入先から商品を仕入れていくという。

事業領域の明確化を図り、子会社を分社

 さらに、2月1日を効力発生日とするトラストネットワークの会社分割を同日発表。分割会社である現・トラストネットワークの商号をトラスト不動産開発(株)へ変更し、ウォーター事業の新・トラストネットワーク(株)、温浴事業の(株)和楽を新設。分社による事業領域の明確化で組織管理体制の整備を進めていくという。

 売上高を牽引する駐車場事業は、16年6月期で5億3,572万円の営業利益を計上するなど同社の稼ぎ頭となっているほか、マンションをはじめとする不動産販売事業も9,311万円の営業利益を計上するなど両事業は堅調に推移している。しかし、駐車場小口化事業の販売遅れのほかアミューズメント事業やRV事業などの赤字事業が足を引っ張っている状況。17年6月期は売上高200億円、経常利益8億5,000万円を見込んでいるが、広告宣伝費の不適切会計処理により問題となったウォーター事業の販売の伸びが、上記の問題後も堅調に推移するか動向が注目される。

(了)

【永上 隼人】

<COMPANY INFORMATION>
代表取締役会長:渡邉 靖司
代表取締役社長:喜久田 匡宏
所在地:福岡市博多区博多駅南5-15-18
設 立:2013年7月
資本金:4億2,299万円
売上高:(16/6連結)140億2,895万円
TEL:092-437-8944
URL:http://trust-hd.co.jp/

 
(中)

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