2024年03月29日( 金 )

時代をひらく女性たち~フォントワークス(株) 原田愛氏(後)

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 政府が成長戦略の1つに掲げる『女性の活躍促進』。しかし、今もなお女性の社会進出に立ちはだかる問題が山積みになっているのは周知の事実だ。それでも、多くの試練を乗り越え、社会に貢献する女性は大勢いる。信念を持ち、働く女性の姿は輝いている。女性経営者シリーズ「時代をひらく女性たち」では、分野を問わずさまざまな業界で活躍している女性にスポットを当てる。

 第6回目は、4月1日にフォントワークス(株)の代表取締役社長となった原田愛氏。(前編はコチラ

 ――原田社長はもともとテクノロジーの分野に興味があったのですか?

フォントワークス(株) 原田 愛 代表取締役社長

 原田 いいえ、まったく(笑)。ITなんて全く興味のない分野でした。ただ、新しいものや流行を追うことが好きな性分でしたので、その頃まさに注目を浴び始めたITの分野に飛び込んでみたんです。

 それからずっと営業畑だったので、いきなりフォントワークスという会社を任されることが決まったときは正直驚きました。けれど、同時に機能性と芸術性ともに誇れるフォントを持つフォントワークスをもっと多くの方に知っていただきたいと強く思いました。そのためにも、現在は「コーポレートフォント」の導入を勧め、企業様のブランディングのお手伝いに積極的に取り組んでいます。
 コーポレートフォントとは、企業のブランディングのために企業独自のフォントを採用すること。企業ロゴや商品タイトルにコーポレートフォントを使うことで、打ち出したいブランドイメージのコントロールや統一が可能になります。

 全ての文字を新しく作ることは現実的ではありませんが、弊社が豊富に持つフォントのライブラリからベースになるフォントを選び、アレンジすることでコーポレートフォントを作成することが出来ます。

 ――企業が独自のブランドイメージを発信するために、フォントを活用するということですか。

 原田 文字は最初に目に飛び込んでくる情報です。もちろん、内容が大切なことに変わりませんが、その内容を100%伝えるにはフォントの持つイメージが大きく作用してきます。コーポレートフォントがあれば、自社がアウトプットするものすべてにその企業色を出すことができる。これは、大きな武器になります。最近ではコンポレートのフォントを持つ企業様も増えてきましたが、地方になるとまだ「書体はお金を出して買うもの」という認識自体、余り浸透していないように感じます。書体は、言葉の力を最大限に引き出すためにあります。フォントの与える影響の大きさを、もっと多くの人に知っていただきたいと思っています。

 しかし、そのためには我々もさまざまな企業様に対応できる書体を作らなくてはなりません。目下の課題は、フォントの多言語化です。英語、中国語などメジャーなものだけではなく、タイやヘブライといった言語に対応したフォントを増やし、海外進出をされるお客様のフォロー体制を整えなければなりません。

 ――4月11日に、世界最大のフォントメーカーであるMonotype Imagingと業務提携を締結されました。

 原田 はい。この戦略的業務提携により、Monotype社が有する9,000以上の欧文・多言語フォントを年間契約で利用できる年間定額制フォントサービス「Monotype LETS」を開始することになりました。

 デバイスやコンテンツは多様化し、そして進化しています。リージョンフリーのソフトウェアやマルチランゲージ化したデバイスなど、一つのコンテンツやデバイス上での多言語化の必要性が顕在化してきており、そのニーズにお応えするために豊富な欧文書体と多言語書体を提供します。
 9,000以上の書体と、9割を超える言語に対応した『Monotype LETS』サービスによって、デジタルコンテンツのボーダーレス化を支援したいと考えています。

 ――この提携によって新フォントワークスは、第一歩を踏み出したわけですね。

 原田 フォントを取り巻く環境は今、大きく変わりつつあります。元来、意思疎通の方法として言葉は生まれました。その意志を伝達・伝承するためにあるのが文字です。発信側と受信側を結ぶ大切な役割を担っています。〝伝達記号としての文字を作るに止まらず、時代を超えて、表現者の感情や息づかいをも残し、言葉の力を最大化する文字″を、創り続けることが我々の使命です。

 今後、フォントワークスは次世代の文字を創造しなければなりません。課題は山積みですが、今が飛躍の時だと感じています。課題を一つ一つ見つけ出して解決し、より良い会社に育てながら、日々進化し続ける言語環境を常に予見し、時代に合った豊かな表現を生み出していきます。

 「最新技術が生み出したインテリジェンスの発する言葉が、情報伝達の役割を超える時、私たちが世界中の人・情報・作品・テクノロジーを優しく結ぶ存在でありたい」というのが我々の願いであり、今後の目標です。

(了)

<COMPANY INFORMATION>
代表取締役社長CEO:原田 愛
所在地:福岡県福岡市博多区上川端町13-15
設 立:1993年8月
問い合わせ:092-261-5678
URL:https://fontworks.co.jp/

<プロフィール>
原田 愛(はらだ あい)
1980年生まれ、宮崎県出身。2013年にソフトバンク・テクノロジー(株)に入社後、16年4月に営業統括第1営業本部 西日本支社長に就任。同年6月にはフォントワークスに取締役最高執行責任者として出向し、今年4月1日付けでフォントワークスの代表取締役社長CEOに就任した。

 

(前)

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