2024年03月29日( 金 )

生体認証に落とし穴はないのか?(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 インターネットの普及で、私たちの日常生活には大きな変化がもたらされている。インターネットを活用すれば、世界中を飛び回らなくても、最近の世界ニュースや情報が入手できるし、距離がどれだけ離れていても、相手とリアルタイムにコミュニケーションを取ることができる。さらに最近は地図情報を参照して、見知らぬところで自分が行きたいところを探すこともインターネットの力を借りれば簡単である。でもインターネットの便利性を一番感じるときはというと、自宅にいながらにしてネットでショッピングをしたり、インターネット上でその支払いを済ませるときであろう。

 最近では通話とインターネットが同時にできるスマホが普及し、いつでも、どこでも、インターネットの利便性を享受できるようになっている。しかし、インターネットの普及は私たちの生活を便利にした反面、一方でさまざまな問題も発生させている。今までの取引はオフラインで行なわれ、対面が基本であった。ところがインターネット上の取引は取引相手と対面していないため、本人の確認が必要になる。本人を確認する方式として、現在はパスワード認証が広く使われている。パスワード認証は採用も簡単で、利用者も慣れている方式ではあるものの、パスワードを忘れたり、パスワードが盗まれたりする厄介な問題も同時に発生させている。

 パスワードの漏洩で情報を取られるだけならまだいいが、インターネット上でクレジットカードなどを使った決済も増加しているため、パスワード認証方式よりもセキュリティの高い認証方式が強く要求されている。このようなパスワード認証の問題を解決するために登場しているのが生体認証である。とくにインターネット経由で行なわれるスマホ決済では、いちいちパスワードを入力するより簡単な方式が求められており、生体認証はそれにぴったりである。

 それでは生体認証はどのくらい普及し、セキュリティ性は高くなっているのだろうか。生体認証にはまず指紋認証、虹彩認証、静脈認証、顔認証などがある。生体認証のメリットは、パスワード方式のようにパスワードを覚える必要がなく、パスワードを入力するようなわずらわしい作業も要らない点である。それに、自分の目や手、それから顔で認証を行うので、簡単かつ安全な本人確認手段となる。パスワードのように毎回入力する面倒な過程はなくても、生体認証は一定以上のセキュリティを確保できるのでそれが評価されているのだろう。

 また、技術が発達することによってセンサーが安くなり、小型化が進んでいる点も生体認証の普及を後押ししている。生体認証の説明を聞いていると、これでセキュリティは万全という気もするが、生体認証には決定的な落とし穴がある。パスワードを忘れたり、盗まれたりした場合、他のパスワードに変更することで対処可能だが、生体認証の場合には情報が流出して他人の手に渡っても、自分の生体認証情報を変えることができないため、リスクが大きい。生体認証は一定レベルまでセキュリティを高めることはできても、完璧なものではない。それでも、生体認証の普及はじわじわと増えている。例えば日本の銀行のATMには指紋認証が全国的に導入されているし、iPhoneにも指紋認証が広く使われていることは周知のとおりである。それだけでなく、オフィスの出入り管理にも指紋認証がすでに使われている。

(つづく)

 

(後)

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