2024年03月29日( 金 )

中国経済新聞に学ぶ~安倍首相年内訪中を計画、AIIBに参加

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 中国政府の主催する「一帯一路」フォーラムが、14日北京で開幕した。習近平国家主席が「一帯一路」の戦略構想を提唱して3年あまり、中国政府が初めて関連国家の首脳を招いて北京で「一帯一路」の推進戦略について協議する。

 中国政府の呼びかけに対し、欧米のG7からは、イタリアのジェンティローニ首相のみが出席を決めた。しかし、3年あまり前に習主席が「一帯一路」の戦略構想を掲げた際、それほど注目されなかったことを考えれば、「一帯一路」に関連する65カ国のうち45%の国家首脳が今回北京に赴き、この重要な協商会議に参加するということは、中国にとってみれば、少なくとも「中国の主張が全世界の共通認識になった」と言える。ここ数年の中国の努力の結果といっていいだろう。

 日本は中国の「一帯一路」構想に参加すべきか否か、そして中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に参加すべきか否か。
 この問題について日本政府は一貫して「慎重」な態度をとってきた。その原因は、アジアのインフラ投資市場において、日本はインフラ産業の輸出拡大によって国内需要の縮小を補おうと考えているが、一方、中国は生産能力過剰、そしてインフラ産業の勃興によって、産業輸出の拡大を狙っていることにある。つまり、日中両国はアジア市場で競争関係を形成しているのだ。中国は「一帯一路」構想を通して巨額の資金を動かし、周辺国家からアフリカ、ヨーロッパに至るまで影響力を拡大しようとしているが、これは安倍首相の提唱する「積極的平和主義外交」戦略、及び日本の国際的影響力に直接影響する。

 今回の北京「一帯一路」フォーラムにおいて、中国側は麻生太郎副総理か世耕弘成経済産業大臣の出席を希望していたが、最終的に安倍首相が派遣した代表団には、内閣のメンバーは1人も含まれていない。主役をなすのは自民党の二階俊博幹事長、そして安倍首相の政務秘書官・今井尚哉氏であり、さらに松村祥史経済産業副大臣、経団連榊原定征会長及び新井正吾奈良県知事、上田清司埼玉県知事なども派遣される。このため中国側はこの日本代表団を、経済代表団ではなく政治代表団ととらえている。
 しかし、たとえ政治代表団だとしても、中国政府は二階幹事長を「副総理」格として礼遇し、習近平主席が自ら二階幹事長一行と会見するよう手配している。中国の日本代表団に対するこのような礼遇は、やはり日本が「一帯一路」構想に積極的に参加し、一日も早くAIIBのメンバーとなり、そして両国の経済協力を強めることを目的としたものである。

 日本代表団には内閣のメンバーはいないものの、それでも安倍首相がこの代表団を組織した際の意図が見て取れる、二階氏は日本における「知中派」の代表人物であるだけでなく、中国の指導者とも深い友誼がある。同時に彼は日本政界における重鎮で、自民党内で二番手に位置する人物だ。そのため、二階氏の北京でのフォーラムへの派遣は、明らかに世耕弘成経済産業大臣より重い。そして首相の政務秘書官である今井尚哉氏が北京を訪れることで、この代表団の政治的意味合いがより強くなっている。
 前資源エネルギー庁次長の今井尚哉氏は安倍首相の重要な側近である。今回今井氏が北京へ赴くことは、中国側に「安倍の腹心が来た」という強いサインを送ることになる。
 今井氏が今回北京を訪ねるのは、「一帯一路」フォーラムへの出席だけでなく、二階幹事長とともに習近平主席と会談を行い、習近平氏に安倍首相直筆の手紙を直接渡すためであった。さらに、今井氏は中国外交部の高官、中日友好協会の唐家璇会長らとも会談している。情報によれば、今井氏は中国の外交事務における最高責任者、楊潔篪国務委員とも個人的に会談したという。

 習近平氏が初めて「一帯一路」構想を提唱した際と比べて、アジアおよび世界の環境には大きな変化が生じた。中国が巨額の出資を行い、東欧の多くの国家の積極的参与を含む周辺国家を惹きつけ、AIIBのメンバーが77カ国にまで成長したことは、1つのわかりやすい例だろう。資金とインフラ市場の競争において、日本はすでに後退し始めている。
 また一方では、日本企業が「一帯一路」構想に積極的に参加し始めており、一部の物流企業が重慶の保税区に進出し、重慶からヨーロッパへの特快貨物列車の力を借りて、日本からヨーロッパへの快速陸運業務を開拓しようとしている。アフリカの日本企業もインフラ市場において中国企業との連携を始めており、共同で第三市場を開拓している。

 政治外交分野では、トランプ大統領が誕生した後、中国との全面的な協力を積極的に求めており、朝鮮半島問題の解決においても中国が核心的役割を発揮することを期待するなど、「中米による世界危機の共同管理」の戦略思想を反映し、日米同盟の重要性にも直接的な影響をおよぼしている。さらに今年は日中国交正常化45周年の年でもあり、安倍首相も中国との関係を改善し、両国首脳の相互訪問を早期に実現しようとしている。

 こういった背景のもとで、安倍首相が依然として中国の「一帯一路」構想に対し、「不参加、非協力」の立場を貫くのは、日本の国家利益を損なうことになるだろう。こうしたことが、安倍首相が「一帯一路」に対する「立ち位置」を変更せざるを得ない根本的な要因となっている。
 二階幹事長は中国鳳凰テレビの取材に対し、「日本は中国の一帯一路がこのような進展を得たことに驚き、敬意を表している。日本は最大限の協力を提供する。日本もAIIBへの参加を検討する」と答えている。二階幹事長のこの回答は、安倍政権の立場の根本的な変化を示している。そしてこの変化は、安倍首相から習近平主席への直筆の手紙にも表れている。

 北京からの情報によると、二階幹事長および今井秘書官は中国高官に対し、「安倍首相が年内に中国を訪問したい」という意思を伝えているという。中日友好協会の唐家璇会長は日本が早朝に日中韓三国首脳会談を開催し、李克強総理の訪日を実現するよう二階幹事長に促している。もし李克強総理の訪日が上半期に実現すれば、安倍氏は今年後半の中国共産党第十九回大会後に正式に中国を訪問し、両国政府が共同で開催する「日中国交正常化45周年記念大会」に参加し、両国関係の「新正常化」を宣言する可能性もある。


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