2024年04月20日( 土 )

試練に晒されている文大統領の外交(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 韓国国内だけではない。北朝鮮問題の解決をめぐっては、各国の立場も少しずつ違う。しかし、冷静に考えてみてほしい。問題解決の大原則の1つに、人間は自分を変えることはできても、他人は変えられないというのがある。すなわち、問題の解決に外部に頼るのではなく、当事者同士で解決するのが早道であると考える人たちがいる。北朝鮮を敵だとしか思わない韓国の保守勢力にとっては、このような思想は危険極まりない思想である。北朝鮮が好きで助けるのではなく、戦争を抑制し、結果的に平和をもたらすために北朝鮮を刺激しないようにしようということなのに、場合によっては、それは大きな誤解を生む。北と南の違いは認め、それぞれが別の体制を維持しながら、1つの国にしようという金大中元大統領の主張もあった。
 このような主張をすると、韓国ではすぐ親北勢力と決め付けられる。今の文大統領もどちらかというと、このような思想を持っていて、一方的に北の肩を持つものではないと思っている。

 それでは、北朝鮮の立場を考えてみよう。金正恩は核兵器を手放すと、自分は相手にされないと思っているに違いない。どんなことがあっても、体制維持のために核開発は止めないだろう。

 米国の立場はどうだろうか。米国にとっては、北朝鮮は脅威でも何でもない。しかし、北朝鮮の存在が東北アジアの緊張を高めることによって、米国は武器の販売にもつながるし、存在感も高められる。韓国にとっては、米韓同盟は防衛の要で、大事である。しかし米国は中国を牽制するために、韓国の防衛にはあまり関係のないTHAADミサイルを韓国に配備しているのも事実である。一方、中国との武力衝突をちらつかせ、武器などを販売しながら、一方で米国は中国とは実益を重視した外交を展開しているのも事実である。このように外交は、自国の利益を優先する場である。

 中国の立場はどうだろうか。中国は米国を刺激しないようにしながらも、常に米国を追い越すための努力を続けていくだろう。中国は、米国に動きが把握されることだけは避けたいので、韓国にTHAADミサイルが配備されることも強く反対するだろう。中国にとって大事な国は米国であって、韓国とか北朝鮮ではない。どちらに統一されても、自分の配下におけるだろうと中国は判断しているようだ。

 最後に、日本の立場はどうだろうか。日本は米日同盟を鮮明にしている。今現在、日本として選択できる最善の方法であろう。しかし、防衛ではそうあっても、他の面では近隣国家である中国、韓国とも、もっとうまく付き合う必要があるだろう。

 日本のマスコミでは、中国経済崩壊のような記事が散見されるが、日本が衰退することはあっても、中国が崩壊することはないと思っている。日本の物差しで相手を判断しては、相手を正しく見ることはできない。日本は、華やかな過去を持っている素晴らしい国であることは認める。しかし、日本の物差しで相手を判断していては、相手と親しくなれないし、それは共存共栄ともほど遠い道である。
 慰安婦問題で筆者の意見を言うならば、韓国政府は日本のお金をもらうべきではなかったし、もう少し国民の意見も聞くべきだった。韓国で問題されているのは、合意のプロセスの不透明さである。日韓関係の足かせになっている慰安婦問題が、早期に解決されることを願ってやまない。

(了)

 
(前)

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