2024年04月20日( 土 )

蓮舫氏戸籍公表 民進党の人権侵害

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 まれにみる人権侵害を、「民進党」という公党がひき起こした。この際、けりがついた蓮舫代表の二重国籍は脇に置いて稿を進めたい。
 蓮舫氏を巡る今回の戸籍騒動が、断末魔をあげる安倍政権の「次」を見越した醜い党内権力闘争であることは明らか。ここで指摘しておきたいのは、今回の騒動が見過ごせない「差別」案件であるということだ。民進党内における一連の動きは、もうすぐ100年を迎える水平社以来の部落解放運動が積み上げてきた、「生まれた場所による差別」解消の闘いを、無に帰するほどの愚挙である。

 戸籍制度は、身分制度を基にした差別の温床となる危険性をはらんでいる。ほんの数十年前まで、差別構造から生まれる現象として、「戸籍謄本」という響きに恐怖し、普通の仕事に就くことを諦めた若者たちがいたのは事実だ。そんな時代があったことを、今、就職活動に奔走する若者たちは想像すらできないだろう。

 就職の際に戸籍謄本の提出を要求されなくなったのは、差別に苦しみ、平等を希求する先人たちの闘いがあったからこそ。人はそれぞれの能力によって判断(区別)されることはあっても、生まれた場所や肌の色、宗教の違い、さらに「国籍」によって差別されることはない。我々が信じているこの命題は、差別撤廃を求めた多くの人たちが闘い取ったものであり、ゆえに不断の取り組みなくして維持することはできない。

 昨日(7月18日)の会見で蓮舫代表は「差別を助長せず、前例にならない形」で公開したと発言した。戸籍制度が身分制に由来するものである以上、差別を助長しない形ということは論理的にあり得ない。おそらく、蓮舫代表は「戸籍」に絡みつくこうした重い意味までは理解していないのではないか。彼女自身が日本社会の多様性を象徴する存在であるがゆえに、残念な発言だったというほかない。

 それにしても情けないのは民進党のほかの議員たちである。支持率低迷や都議選の大敗という組織全体の責任を蓮舫氏1人に押し付け、被害者づら。党の代表を守ろうともせず権力の果実だけを横取りしようというのだから、厚かましいにもほどがある。この政党に政権を担う資格などない。

【小山田 浩介】

 

関連記事