2024年03月29日( 金 )

空気清浄機販売のSoft-EXをめぐるトラブル(前)~多額の借金で購入した学生たち

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 支払い遅延が発生している空気清浄機の販売・レンタル業者(株)Soft-EX(本社:東京都中央区、高井理道代表)。同社は、除菌や消臭効果を謳った空気清浄機(1台2万円)を販売し、その購入者から業務委託を受ける形でレンタル事業を展開。毎月交換する弱酸性次亜塩素酸水の詰め替え用ボトルの代金3,800円の約4.9%にあたる金額(1台あたり980円)を空気清浄機の購入者に「協力金」と称して分配する仕組みを提案し、販売を行ってきた。しかし、今年の1月頃から、購入者に対する毎月の「協力金」や業務委託契約を解約した場合の空気清浄機下取り代金(以下、解約金)の支払いが遅延。静岡地裁では複数の購入者から損害賠償を求める訴訟を起こされている。

若者に多額の借金を勧めて販売

Soft-EXの空気清浄機

 「福岡市を中心に九州で150名~200名、全国では2,500人くらい」(同社・加瀬智司取締役)という同社空気清浄機の購入者。そのうちの複数の証言から、今年5月に閉鎖した福岡市の同社の九州支社では、学生やフリーターに対して購入代金を借金で工面するように勧めていたことが判明した。実際に、借金を元手に100万円以上の売買契約を交わしたという事例もいくつか浮上。また、借り入れの際、同社社員がネット申請の代行するほか、購入予定者を同社社員と称し、支払い実態のない給与金額を記入した“偽の給与明細”を発行していたという。

 「将来の社会を救う資産家を育てたい」。昨年10月、大学生のAさん(22)は、同社の営業マンからそのように口説かれたという。「Soft-EXの社員という設定で、給与明細を渡され、車購入の目的で銀行のフリーローン(金利14.4%)を申請し、200万円の融資枠を作った」。当初は、Soft-EX側の説明に半信半疑であったAさんだが、「購入者がいなくても、レンタル事業だけで成立しそうな話なのに、わざわざ購入を勧めるのは(投資家育成の)理念があると思った」と、好意的に捉えて11月に契約。190万円を空気清浄機88台分の購入に充てた。

 しかし、空気清浄機のレンタル料の約5%となる協力金8万8,000円の支払いがあったのは、今年1月の12月分のみ。以降は支払いが遅れており、今年5月末に解約したが、その解約金156万4,874円は、6月23日現在、支払われていない。「Soft-EXは業績が回復するというが、その根拠を求めても『出せない』と突っぱねられた」(Aさん)。借金の残金は約188万円。毎月3万2,000円の返済で生活は逼迫しているという。

 昨年10月に契約したフリーターのBさん(21)は、実際の給与の額を2倍近くに増やした偽の給与明細を渡され、同社社員が同行する形で、銀行系ローン数社を回り、合計で90万円の融資枠を作った。そのうち55万円を空気清浄機26台分に充てた。毎月2万5千円の協力金が支払われる予定であったが、支払いがあったのは今年1月の1回のみ。「次の月には売上が伸びるので支払える。大丈夫と担当社員に言われたが、その月末には、支払遅れの可能性を示唆する知らせが来た」(Bさん)。「言っていたことと違う。お金を返して欲しい」というBさんは、同社と契約したことを後悔しつつ、毎月計1万6,000円の返済を続けている。

 AさんやBさんのように、借金の返済で苦しむ購入者は少なくはない。ある別の購入者は、「借金返済のために昼夜バイトし、就活ができない」と嘆く。こうした“顧客”の窮状を同社の関係者はどのように受け止めているのだろうか。責任者クラスへの取材で見えたのは、窮状に陥った彼らの存在から目を背け、その事実をごまかそうとする姑息な姿勢であった。

(つづく)
【山下 康太】

 
(後)

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