2024年04月25日( 木 )

アイランドシティを舞台に新たな疑惑(2)~Little Japan

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 福岡アイランドシティがまだ人工島と呼ばれていたころ、同地は「疑惑の島」として注目を集めたことがある。博多港開発(株)が、土地利用計画決定前にケヤキや庭石を約10億円で購入した事件では11名が逮捕され、アイランドシティのイメージは地に墜ちた。そのアイランドシティでいま、土地活用をめぐる新たな疑惑が浮上している。いわくつきの人物が事業者に決定しただけでなく、事業計画についても実現性の乏しさが指摘されている。

相次ぐ取材拒否―事業者の適格性に疑問

(株)ハーツ本社には、福岡アイランドシティ特定目的会社の名前も

 特別取材班は、市に対して事業者決定についての情報公開請求を行ったものの、事業者から漏れたX社の企業名のほか、ハーツ社以外の企業名公開を拒否された。しかし、独自取材によっていくつかの企業名が判明している。市が作成した評価表にA、B、Cと表示された企業のうち、Aはハーツ社、Bは健康食品大手の地場企業Y社だった。Cの企業名はいまだ不明だ。建機レンタルやフィットネス、メガソーラー事業を営むというCは、不思議なことに、あとに設立された福岡アイランドシティ特定目的会社の法人登記には姿を現さない。特定目的会社(SPC)が設立される前に計画から降りたのか、あるいは何かの事情であえて企業名を隠していると推察される。

 法人登記には、同SPCの支配社員として、ハーツ社、Y社とともに「一般社団法人F」が名を連ねる。同法人の理事であるM氏は、前述外資系J社がプロパティーマネジメント(不動産資産管理)をする際に組んだことのある公認会計士だ。M氏は都内総合会計事務所の代表を務めており、SPCの資産流動化計画を担当しているとみられる。16年7月に設立された法人Fは事務所を都内港区虎ノ門に置き、同法人と同じ住所・部屋番号には別の法人も登録されているため、SPCのために設立されたペーパーカンパニーだろう。

 公共性の高い埋立地を開発する事業者であるにもかかわらず、なぜ市は事業者を秘匿するのか。取材班は、この事業に関連して企業名が判明したハーツ社、Y社、J社、M氏、融資を行ったメガバンクの担当者など、あらゆる関係先に取材を申し込んだが、すべてが取材を拒否して堅く口を閉ざす。

福岡市に提出された、ホテルの完成予想図

 NetIB-Newsが今回とりあげる「疑惑」の中心は、ハーツ社に関するものだ。同社は15年11月25日に設立。主にインバウンドを狙ったコンシェルジュサービスを事業の中核に置く。同社代表取締役社長を務めるT氏はかつて、若手起業家の1人として注目を集めていた人物だ。T氏が起業家としてデビューしたハーツ社関連企業は、県内を拠点としたビジネストラベルマネジメントを行っているが、11年4月ごろには大手旅行代理店に対する400万円の未払いが発生して販売代理店契約を解除されている。支払い状況の悪化は業界内で周知の事実だったという。

 T氏は、11年から16年にかけて4つの企業を設立して事業を拡大。12年には旅客バス事業の(株)ロイヤルバスを設立して、大阪市内の男性とともに代表取締役に就任、16年には同男性が代表取締役を務める大阪市内の旅行関連企業代表取締役に就任した(17年4月に辞任)。

 福岡市政をつぶさに観察している者であれば、T氏の名前に心あたりがあるのではないか。T氏が最初に設立した企業の取締役に名を連ねるのは、A氏。A氏は高島宗一郎福岡市長と関係が深く、10年11月に最初の当選を決めた高島市長は、選挙における尽力に報いるかたちで、A氏を市の顧問に任命している。A氏は高島市長の「遊び仲間」としても知られていたが、T氏はA氏を経由して高島市長につながる若手経営者の1人だったのだ。現在、T氏はA氏と距離を置き、高島市長の私設秘書で市政にも大きな影響力をもつK氏との関係を深めている。

 先月明らかになった、国家戦略特別区域(国家戦略特区)をめぐる疑惑でもT氏の名前は登場する。今年4月から福岡市で運行が始まっている「エアポートアクセスバス」は、国家戦略特区によって事業認定されたもので、バス料金の規制や路線開設にあたっての手続きなどが緩和されている。このエアポートアクセスバスを運営するのが、T氏が代表取締役を務めるロイヤルバスなのだ。ロイヤルバスは、16年7月期決算で3億2,000万円の赤字を計上、4年間にわたってほとんど利益を出していなかったにも関わらず、市の全面的バックアップのもとで特区に事業申請していた。

 事業内容は定期的ヒアリングが課せられており、10月18日にはこのエアポートアクセスバスについて1回目の分科会が開かれた。分科会にはロイヤルバスを代表してT氏が出席しているが、そこでの発言内容については「偽証」疑惑が持ち上がっている。

(つづく)
【特別取材班】

 
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