2024年03月29日( 金 )

朝鮮半島危機の行方を左右する北朝鮮の地下資源利権

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 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」から、一部を抜粋して紹介する。今回は、12月22日付の記事を紹介する。


 朝鮮半島をめぐる動きが風雲急を告げている。国連の度重なる制裁決議にもかかわらず、北朝鮮による核実験や弾道ミサイル開発が止まる気配がないからだ。金正恩委員長は「グアムへの弾道ミサイル発射も辞さない」とか「アメリカ全土を火の海にする」といった脅しを繰り返す。となると、アメリカのトランプ大統領も黙ってはいない。

 一時は「マクドナルドでご馳走したい」と、柔軟な対応を見せたこともあったが、北朝鮮の態度に業を煮やし、「かつてないような炎と怒りをぶつける」とか「地球上から北朝鮮を抹殺する」など強硬姿勢で応じるようになった。いわば、双方とも「言葉のミサイル」をぶつけ合っているようなものだ。その都度、内外の株価は上下し、アメリカでも北朝鮮でも避難訓練に拍車がかかった。

 メディアでは「年末年始が危ない」とか「韓国の平昌で開催される冬季オリンピックが狙われる」といった、危機をあおるような報道や解説が目に付く。アメリカの議会では「在韓米軍の家族に退避勧告を出すべきだ」とか「アメリカによる先制攻撃の確率は日々高まっている」といった議論も聞かれる。

 たしかに、アメリカは北朝鮮に向けていつでも先制攻撃が発動できる準備は進めているようだ。韓国にある米軍のハンフリーズ基地は1兆5,000億円を投入し、強大な要塞化を完成させた。北朝鮮の反撃を阻止できる迎撃態勢も完了したとのこと。迎撃ミサイルシステムの製造メーカーであるロッキードやレイセオンにとっては「戦争こそ最大のビジネスチャンス」といったところであろう。

 とはいえ、ティラーソン国務長官がたびたび提唱しているように、「話し合いによる問題解決」の可能性もなくなったわけではない。トランプ大統領は「話し合いは時間の無駄」と言いながら、ティラーソン長官の水面下の交渉を完全に排除するまでには至っていないからだ。

 加えて、中国やロシアの動きも影響している。両国とも「緊張緩和に向けた話し合いの場を設けるべき」との姿勢を堅持している。トランプ大統領としても、習近平主席やプーチン大統領との関係にある程度は配慮せざるを得ないだろう。要は、アメリカといえども北朝鮮との戦争を本音では望んでいないフシが見え隠れするのである。金正恩委員長とて同じではなかろうか。

 では、「戦争も辞さない」とする過激な発言を双方が繰り返す背景は何なのか。この点を抑えておかなければ、米朝関係の表面的な対立志向に翻弄されるだけで終わってしまう。実は、北朝鮮の核ミサイル開発によって一番得をしているのは誰か、ということを冷静に判断する必要がある。

 その答えは北朝鮮にある。アメリカへの抑止力を確保したうえで、韓国や中国に対しても強い立場で交渉できるカードを手に入れたといえるからだ。北朝鮮のミサイルの脅威に対応するためアメリカは韓国にTHAADと呼ばれる高高度の迎撃ミサイルシステムを配備したが、今回の米朝間の応酬を経て、さらに追加配備が計画されることになった。この迎撃ミサイルシステムは北朝鮮のミサイルにはまったく無力であることは軍事関係者の間では周知の事実であるにもかかわらずである。

 ではなぜ配備が進んでいるかといえば、中国国内の軍事的動きを把握する強力なレーダー機能があるうえに、中国からのミサイルを打ち落とすことが可能となるからだ。アメリカは北朝鮮ではなく、中国の将来的な脅威に対応する目的でTHAADの配備を進めているわけだ。

※続きは12月22日のメルマガ版「朝鮮半島危機の行方を左右する北朝鮮の地下資源利権(前編)」で。


著者:浜田和幸
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