2024年03月29日( 金 )

日本は海洋資源大国 カギはメタンハイドレート(1)

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国際政治経済学者 浜田 和幸

 狭い国土に人が密集しているが、石油などエネルギー資源の乏しい国。必要なエネルギー源の9割を外国に依存する。これが「島国日本」に関する一般的な見方ではないだろうか。しかし、そうした定説を覆す可能性が出てきた。そのカギを握るのは日本を取り囲む海にある。

 国土面積だけを見れば、日本はたしかに世界第60位に過ぎない。しかし、領海とEEZ(排他的経済水域)という視点でとらえれば、何と、世界第6位の「海洋大国」にランクインするのである。

 改めて世界地図をよーく見て頂きたい。近年、中国や韓国との間で尖閣諸島や竹島の領有権が問題になっていることはご承知の通り。たしかに、中国や韓国の先を遮るように日本列島が南から北へ弓状に伸びており、その先の太平洋上の領海とEEZを日本が1人占めしていることがよくわかるはず。出口を塞がれたかたちになるわけで、中国や韓国がいら立つのも無理からぬ話かもしれない。

 とはいえ、問題はこの広大な「日本の海」をどう活用するかということである。「海からの贈り物」は豊かな海産物や潮流発電に限らない。実は、日本が必要とする未開発のエネルギー資源が何百年分も眠っているのである。それこそ「燃える氷」と呼ばれる天然ガスの一種、メタンハイドレートに他ならない。水とメタンが結合し、結晶化した物質。分解すれば天然ガスが得られる。

 形状は氷状の塊で、高圧、低温地帯に分布しており、燃やしてもCO2の排出量が天然ガスの3分の1以下といわれる。地球温暖化対策にも効果的な資源であることは間違いないだろう。日本では「液化天然ガス(LNG)の代替」としての期待が高い。世界全体の埋蔵量は少なくとも2,800兆m3といわれる。

 とくに、東日本大震災以降は、原子力や石油に代わるエネルギー源としてのLNGへの期待が高まる一方である。しかし、その分、日本が輸入するLNGは急増中だ。日本の貿易収支において、この輸入LNGの占める比率は14兆円に達する。もし、国産のLNGが調達可能ということになれば、日本の国際競争力は飛躍的に向上するに違いない。

 アメリカではエネルギー省と海軍が協力し、その探査と開発に取り組んできた。筆者はハワイで開催された「第1回世界メタンハイドレート開発会議」に参加したが、日米の専門家や企業関係者に加え、中国、韓国、ロシア、北欧諸国からも代表団が情報収集のために集まっていた。

 2010年に建設会社やエンジニアリング企業が中心となって立ち上げた日本プロジェクト産業協議会によれば、「日本のEEZ内に眠るメタンハイドレートの商業価値は120兆円に達し、海底熱水鉱床は80兆円になる」とのこと。そして、それぞれが年間5万4,000名、3万5,000名の雇用を生むというから期待が高まる。

(つづく)

<プロフィール>
hamada_prf浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。
今年7月にネット出版した原田翔太氏との共著『未来予見〜「未来が見える人」は何をやっているのか?21世紀版知的未来学入門~』(ユナイテッドリンクスジャパン)がアマゾンでベストセラーに。

 
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