2024年04月20日( 土 )

訪日韓国人急増の背景(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 韓国から一番近い福岡は、仁川空港からだと、飛行機で1時間もかからない。韓国の南にある釜山から博多まで、高速船ビートルが1日往復23便も就航している。このように地理的な利点から日本は海外旅行先として選ばれている。それに、最近のLCC(格安航空会社)の登場も欠かせない。釜山から福岡まで往復で9,000円を下回るチケットもあるようだ。さらに、テレビの旅行番組で日本が多く紹介され、日本に興味をもつようになることも多い。とくに、インターネットを検索すると、日本の観光スポットを紹介する記事や写真が多く掲載されている。旅行経験談などを読んでいるうちに、ぜひ行ってみたくなるのではなかろうか。

 このようなケース以外にも、温泉やゴルフを楽しむために福岡に行く韓国人が最近おおいようだ。円安が続いていて、韓国よりも日本でラウンドほうが安くなっているので、福岡に来るという。

 福岡では韓国では味わえない異国の情緒が堪能でき、また日本のおいしい食べ物、ゴルフ、温泉、買い物などを満喫できるからだ。

 普通の観光とは違った医療ツーリズムも最近話題になっているようだ。現在韓国ではまだ細胞治療は法律で禁止されている。日本では京都大学の山中伸弥教授がiPS細胞研究でノーベル生理学・医学賞を受賞したことによって、再生医療を発展させるために、日本政府は法律を整備し、医師の責任の下で細胞治療が可能になっている。それで、韓国のがん患者などが日本で免疫治療を受けるため、月1,000名ほど来日しているという。

 距離が近い福岡はそのなかでも一番人気があり、細胞治療に温泉、ゴルフといった医療ツーリズムが活発に行なわれている。それに、福岡は他の都市と違って空港が近いことも何よりの魅力である。また、幹細胞治療などの目的でも来日している韓国人が月平均1,000名ほどいるようだ。

 韓国人が日本に押し寄せる理由には人によってさまざまで、自分の好みに合わせた旅行計画を立ててそれぞれ日本に来ている。韓国人にとって日本の大きな魅力の1つは日本の先進性と、それと同時に古い伝統が温存されていることではないだろうか。

 それがいいことか悪いことかを別にして、今の若者には教育よりも現実が優先しているようだ。反日教育を受けたとしても、それは自分で直接経験したことではないが、自分で直接経験した文化のほうが、影響が大きいのは当たり前かもしれない。それで、韓国マスコミの反日姿勢とは関係なく、若者は日本のアニメを好み、日本のコンテンツを楽しんでいる。

 韓国と日本は似ているようで全然違うので、それに新鮮なショックを受け、またそれがいい感動になって、訪日がリピートしているのではなかろうか。インターネットの影響なのか、日本に住んでいる私より、観光で訪日した人のほうが日本事情に詳しくてびっくりすることが良くある。昔だったらありえない現象である。例えば、筆者は肩こりなどに効果があるとされる「ロイヒつぼ膏」のことは知らなかったが、知り合いの韓国人が来るたびにそれを買いたいと言っていたので、それが韓国では有名であることがわかった。また韓国人から良く聞くのは、日本のコンビニ弁当はこれほどおいしいとは思わなかったということである。韓国のコンビニの弁当と比較すれば納得はいく。

 このように、韓国から見れば「実現していそうで実現していないもの」が日本にはいろいろあって、それが韓国人には驚きのようだ。安全できれいな街、親切な接客態度など、韓国人が日本に押し寄せるにはそれなりの理由がある。ただ、クレジットカードが使えないお店が意外と多いことが、別の意味でも驚きのようだ。

(了)

 
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