2024年04月19日( 金 )

斜陽アパレル業界で急成長 新事業開発に営業利益の3割投入(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

(株)ストライプインターナショナル

 服が売れない時代に創業20年あまりで連結売上高1,000億円を突破した(株)ストライプインターナショナル(旧・(株)クロスカンパニー)。老舗・名門が店舗削減やブランド絞込みなど守りの戦いを余儀なくされるなか、同社はM&AやITを駆使して業容を拡大し続けている。また、事業領域もライフスタイルやITへと手を広げている。グローバル戦略と多角化で1兆円企業を目指す同社の戦略とは。

ブラック対象企業から働きやすい会社へ

 こうした成長を継続するには、人材の確保が不可欠だ。同社は17年4月に新卒500名を採用。中途でも400名を確保する予定だ。いかに躍進著しいとはとはいえ、売り手有利の求人市場下で年間900名の採用を実現するのは容易ではない。

 同社は13年にブラック企業大賞にノミネートされたことがある。「全員正社員雇用」を旗印に環境整備を進めていたが、09年から11年の急成長下の労働環境は劣悪だった。22時前まで働くのが常態化。09年に入社1年目の社員が過労死する事態に至った。死亡した社員は111時間以上の時間外労働をし、さらにノルマ達成のため月間5万円以上の自社商品を購入していたことが後に判明した。新卒者を大量に雇用したがノルマに耐えきれない離脱者を出す状況が散見されていた。

 こうした状況を受け、同社は11年から労働環境の改善に着手する。残業削減と有給消化を促進。とくに幹部からの取り組みを徹底させた。一般社員向けには効率的な業務を遂行するため、売上や労働時間をグラフ化ツール「ストライプ生産性マトリクス」を提供して改善に取り組んだ結果定時18時15分に全社員が退社する。繁忙期にやむを得ず残業するに際には上司の承認を得ることが徹底されている。

 同時に若者世代のマネジメント方法も変えた。属人的なスキルで成長した世代の中間管理職に意識改革を求め、若手がチーム力で力を発揮するように変えた。意見を引き出しやすい空気づくりに注力させたのだ。14年からは全社員に対して無記名アンケートを実施。待遇や研修、人事制度についての声を集める。集めた結果に取り組んだものとして全社休日の増加、給与の引き上げなどを実施した。母数が多いだけに意見の中には外れ値も含まれるが、意見を取り上げる目安を「同じ意見が最少5名から寄せられた場合」と設定。1人の後ろに100名の不満があると判断し5名以上から集まった意見はすべて解決する。

 この制度により、それまで高かった入社3~4年目までの社員の離職率が1年目社員で11%にとどまるようになった。こだわってきた全員正社員制度も廃止した。いまの若者が必ずしも正社員化を望んでいないことをつかんだからだ。

 職種柄女性社員の割合が圧倒的に多い企業だが、こうした取り組みの結果、女性管理職は53%に上り、政府の目標より先行している。今後は外国人従業員とLGBT従業員の比率を高めることに注力することになる。現在5,000名以上の従業員のうち外国人は320名だが将来的に約3割に引き上げ、責任者も現地で採用する。

18年はいよいよ上場か

 昨年11月、同社はベトナムで44店舗を展開する「NEM」のアパレル事業を買収した。M&Aを含めた海外展開と新事業への投資はさらに加速していくだろう。

 16年に上場準備に入ったが、17年度中の実現はなかった。気になるのはそれまで公開してきた売上高が非公開となったことだ。これまでの動きをみるとわずかに減収したと見るのが有力だ。また、17年1月期は最終赤字を計上したと見られる。上場に向けた最終準備と捉えたいが、従業員の士気向上や成長速度を上げるための資金調達のためにも早期の上場が不可欠。

 まずは、18年初めのニュースは「攻め」か「守り」か、ユニクロに次ぐ1兆円企業を実現できるか、ストライプの本気度と可能性が見えてくる。

(了)
【鹿島 譲二】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:石川 康晴
所在地:岡山市北区幸町2-8(本社)
    東京都中央区銀座4-12-15(本部)
設 立:1995年2月
資本金:1億円
売上高:(17/1連結)約1,200億円

 
(中)

関連記事