2024年04月21日( 日 )

障がい者の就労支援事業所、「MAXY」~関係者が語る税金詐取の手口

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 元利用者やスタッフへの給与未払いを発端に、経歴詐称や障害福祉事業所開設をめぐる出資詐欺的行為の疑いまで発覚した福岡県大野城市の就労継続支援A型事業所、「MAXY」の老田善弘代表。老田氏は疑いのほとんどを否定しているが、関係者の主張とは大きく食い違っている。関係者が不正請求の手口を語った。

 就労継続支援A型事業所では、障がい者の就労を促進するために職業訓練を提供している。利用者(障がい者)は最低賃金以上で雇用契約を結び、働いて賃金を得ながら就職などを目指す。自治体から指定を受けた障害福祉サービス事業所は、国の基準に基づき、給付費として公金を受け取っている。一般的に事業所は給付費と外部収入で運営されているが、現実的には給付費への依存が大きく、外部収入を得られない事業所が多い。

そもそも就労支援は存在するのか

 では、MAXYの事業実態はどうなのか。MAXYは福岡県からA型事業所としての指定を受け、大野城市、太宰府市、春日市、福岡市などから利用者を受け入れ、各自治体から給付を受けている。MAXYの事業計画書で目をひくのは、老田氏が代表を務める“自称IT系”の別会社「(株)ワーコム」(福岡市中央区)を中心に置いたスキームだ。計画書によると、(1)ワーコムが受注したHP制作などの仕事をMAXYに業務委託、(2)MAXYの利用者がHP作成などを通してスキルを磨くとともに、成果物をワーコムに納める、という事業フローになっている。つまり「売上」のほとんどがワーコムを経由しており、もしワーコムが機能していなければMAXYへの仕事は来ないということになる。
 しかし、ワーコムが受注したと主張する「HP制作」の内実が本当に職業訓練にふさわしいものかは、極めて怪しい。関係者によると、利用者がもっぱら行なっているのは、老田氏関連のSNSアカウントをフォローするという意味不明の作業とワーコムの伝票整理だという。実際、ワーコムには「事業」と呼べる実態がほとんどなく、限りなくペーパーカンパニーに近い。

情報公開請求で明らかとなったMAXYの事業計画

短時間でもフルタイムで申請

 給付金の請求についても不可解な実態が判明している。利用者の出・退勤を表す「実績記録表」は通常、利用者本人が毎日出勤と退勤時間を記録して押印する。しかしMAXYでは、給与計算の締め日直前にまとめて作成されていた。
 驚くのは、遅刻、早退、欠勤した場合でも、定められた営業時間いっぱいの午前10時から午後4時の勤務実績が記録され、まとめて1カ月分の押印を行なっていたということだ。「働いた時間よりも長い時間が書かれてあり、それにハンコを押すように言われていた」――元利用者はそう証言する。事業所は実績記録表を基にして自治体に給付費を請求しているため、実績記録表の偽造は紛れもない不正請求だ。

目立つ施設外就労の回数

 別の関係者は「施設外に出ていないのに、施設外就労したことになっていた」とも話す。これは、施設外就労1人につき1日1,000円の給付金が加算されることを利用した不正の可能性がある。仮に10人の利用者が全員施設外就労に出れば、1日につき給付が1万円増額される計算で、月単位でみれば平均で約20万円増となる。「施設外就労にはスタッフの引率が必要なので、スタッフの少ない事業所では十分に行うことができない」(障害福祉事業関係者)にも関わらず、MAXYで頻繁に施設外就労が申請されていたとすれば、あまりにも不自然だ。

 事業所から実績記録表を受け取る自治体は、利用者の勤務状況を詳細に把握できる立場にある。改めてMAXYから申請された請求書を見直すべきだ。給付金は税金であるとともに、本来は適切な障がい者支援のために支出されるべきものだ。老田氏は嘘を重ね、不正を繰り返して障害福祉事業に対する信頼を損ねた。出資金が戻ってこないなどの被害者はもちろんだが、最大の被害者は「障がい者」自身であることを再度指摘しておきたい。

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