2024年03月29日( 金 )

会社に住まう魑魅魍魎を退治し、もう一度原点へ~積水ハウスOBからの直言

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 品川区五反田の一等地約600坪をめぐって、「地面師」から63億円をだましとられた巨額の詐欺事件や和田元会長の解任など、住宅メーカー最大手の積水ハウスが揺れている。NetIB-Newsでは今、過去に掲載したものも含めた「積水ハウス」関連の記事を連載中で、好評を得ている。読者からもさまざまなご意見が寄せられており、今回はそのなかの1つを紹介したい。執筆者は、かつて中部地方の積水ハウス支社で店長職を務めていた人物。「自分を育ててくれた積水を愛するからこそ」、苦境に立つ古巣にあえて苦言を送るという。(編集部)


会社に住まう魑魅魍魎を退治し、もう一度原点へ~積水ハウスOBからの直言

 私は、和田社長時代に中部第一営業部内の支店で営業をしておりました、元店長職の営業マンです(15年ほど前に退社)。1月末の和田会長辞任の報を受け、改めて積水ハウスという会社と、かつてそこに存在した自分に思いを馳せることができました。

 入社式のとき、当時の田鍋健社長から「みんなは同じ釜の飯を食う仲間なんだ」という言葉をいただいたことと、力強い握手をしていただいたことも懐かしく思い出すこともできました。当時はそれこそ「イケイケドンドン」な社風で、ある意味怖いものなし。一体感のある社員たちと社風が思い出されます。もちろん営業は厳しかったのですが、充実して過ごすことができたのだと思います。

 そのような会社も和田元会長が出世街道を駆け上がるのに伴って変わって行きました。和田閥の中部営業部部長や、和田派各支店長の偉そうな態度。人間的には良いものの数字をつくるのが苦手な若手社員たちを罵倒し、退社に追い込む上司。中部営業部内の各支店の不動産取引に割り込まされる「謎の」宅建業者の存在。支店での分譲用地仕入れなどに際して「神の声」のように上から、「いち」という宅建業者を仲介に使えという声が下ってくることがありました。この話があると担当者は困ってしまい、失礼のないように断る方法を一生懸命考えていました。あとで知ることとなりますが、正確には井智、創紀という2つの宅建業者で、なぜか名古屋の同じ住所地に登記されている会社です。和田社長時代になってからは、全国の支店で大きな不動産取引にかかわってきたようです。和田元会長が中部営業部に在籍していたころからの付き合いで、かなり昔からの関係だと思われます。

 このような和田元会長がらみのきな臭い外部業者は他にもありました。中部エリアの各支店で行う、正体不明の2人組研修員による自己啓発セミナーまがいのバカげた研修。それらに一体いくら支払ったのでしょう。社内には、元トップセールスのほうが自身の経験を生かして体系化された、本当にすばらしい研修教材と制度があったにもかかわらず。

 携帯電話で絵文字をつくり、顧客に送ることを自慢する精神的に幼稚な支店長、そして精神論で数字を上げる話しかしない者たちが跋扈しました。もちろんそれに反発する者もいました。彼らは厳しくても、数字のつくり方を、勝ち方を自身の背中で教えてくれました。そんな営業思いの支店長もいましたが……そのような方はすぐに左遷されました。

 和田派のお目付け役の下に配置転換されたり、関連会社に出向。私が退社してから、さらに大変なことが平気で起きる会社になっていたのは想像に難くありません。

 私が退社したころは、退社の理由が「実家の家業を継ぐことになった」などのやむをえない事情がほとんどで、営業社員の定着率は悪くなかったと思います。しかし、それ以降は「部下を殴った」「空契約の実績を計上した」「印紙代を使い込んだ」などの刑事事件まがいの理由による解雇が増えました。「辞めてダイワハウスなどの他社で営業をする。こんな会社では続かない」という理由で営業の退社率が高くなり、ある程度実力がある人間ほど会社を去るという現象が起きています。社内の異常な体質から逃げたのだと思います。ちなみに、この会社に労働組合はありません。

 和田会長の辞任。これを機会に少しずつ、積水ハウスという会社に住み着いていた魑魅魍魎を退治して、会社を働く皆の手に取り戻すことを祈ります。阿部新会長には前会長と同じ轍を踏まないことを願います。任期の間に社内の改善を行い、きれいにして、そして今回の事件の責任を取ってください。そうすればきっと、阿部新会長こそが「積水ハウス中興の祖」として社員の記憶に残る経営者となるのではないでしょうか。

 「働く皆は、同じ釜の飯を食う仲間なんだ」

 もう一度、「人間愛」の前にこの言葉をと思います。


 

 

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