2024年04月26日( 金 )

公文書改ざんは、官僚のしかけた時限爆弾か~元官僚は、詳細な記録に違和感

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改ざんがあきらかになった公文書

 1人のノンキャリアが死を賭して訴えようとしたものは何か。そして、その死を知ってなお、しかめっ面で「佐川が、佐川が」と繰り返す、麻生太郎財務相の傲岸不遜な謝罪会見。いったい、この国はどうなってしまったのか。

 まず、森友学園問題とされる一連の疑惑について整理しておこう。大きな論点はただ1つ。森友学園が小学校を開設するにあたって、設置認可や国有地の払い下げに行政側の恣意的判断がなかったか、という点だ。恣意的判断を裏付ける証拠をめぐって、昨年来与野党は論戦を繰り広げてきた。今回明らかになった公文書改ざんは、(1)「その議論の前提となっていた事実が崩壊した」という点で衝撃が大きい。まずは、(2)「公文書偽造という刑事責任の危険を冒してまで、なぜ官僚は公文書を改ざんしたのか」という、「動機」の解明が焦点になるが、(3)「関係者に相応の責任をとらせる」まで到達できなければ意味はない。本丸は、「行政の長として責任を痛感」と、どこか他人事でうそぶく安倍首相にほかならない。

安倍首相と昭恵夫人

 改ざんは14文書、約300カ所にのぼる。安倍首相夫人の昭恵氏のほか、鴻池祥肇・元防災担当相、平沼赳夫・元経済産業相、北川イッセイ元参院議員ら政治家の名前も削除されていた。森友学園と、憲法改正を進めるウルトラ右翼・日本会議の関係も詳細に記述されており、そのなかには副会長として安倍首相の名前も登場する。
 ある元官僚が「違和感を抱く」と指摘するのは、削除された部分に森友学園側との生々しいやりとりが入念に記録されていることだ。通常の公文書ではあり得ないほどの偏執的な細かい記述からは、不本意な行為に手を染めた「官僚の悔しさ」もにじみ出る。いつか問題になるであろうことを見越して、あえて詳細な記録を残した可能性もある。いわば「時限爆弾」ともいうべき執念の賜物だ。

 官僚が公文書の改ざんを行ったことを、「明治以来の大罪」と断じた紙面もあった。日本人が、ぼんやりとではあるが確信していた「役所は間違わない。公平・公正である」という前提を破壊したという意味では、決して大げさな表現ではない。「政治は三流」とされながらも日本が現在の繁栄を築けたのは、一流の経済を一流の官僚たちが先導した側面があったことは否めない。経済が二流に堕ち、官僚からも腐敗臭が漂い始めたとあっては、「日本終了」と揶揄されてもしかたあるまい。もはや他国を「独裁」などと非難することはできなくなった。この国には公文書を自在に書き換える独裁者が君臨しているのだ。

 

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