2024年04月20日( 土 )

ふくおかFGと十八銀行の経営統合~公取委の不承認を検証する(前)

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 連休明けの5月7日、ふくおかフィナンシャルグループ(以下、FG)と十八銀行は、2年余り経過した今も公正取引委員会の承認がなく、無期延期となっている経営統合の実現に向けた取り組みを別紙の通り発表した。はたして経営統合は実現するのか。それとも白紙に戻るのか。これから検証していくことにしたい。

~ふくおかFGと十八銀行の経営統合が無期延期となっている経緯について~
 2016年2月26日、ふくおかFGと十八銀行が【表1】のスケジュールで経営統合することで基本合意。最終目標は長年ライバル関係にあった十八銀行と親和銀行が2018年4月1日に合併予定としていた。長崎県に預貸金シェアが70%を超える銀行の誕生は九州の地銀だけではなく、全国の地銀に「経営統合はいつどこでもありき」との憶測を呼び、大きな衝撃を与えたのだ。

~拍車がかかる地銀の経営統合~
◆関東地区
 関東地区では、ふくおかFGと十八銀行の経営統合が発表された2カ月後の2016年4月25日、茨城県を地盤とする常陽銀行と栃木県を地盤とする足利銀行を傘下にもつ足利HDが、株式交換により経営統合することで最終合意したと発表。足利HDが常陽銀行を子会社化。同社が両行の持ち株会社となり、半年後の10月1日に社名を「めぶきFG」に変更しスタートした。

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この表からみえるもの

・県境を接する地銀同士の経営統合。栃木県の貸出金シェアは足利銀行が69.7%で、栃木銀行は30.3%。また茨城県は常陽銀行78.5%に対し、筑波銀行は21.5%。シェアの変動はないため、公正取引委員会が意見をさしはさむことはなかった。ただ同一県内の地銀同士が経営統合する際、筑波銀行のシェアが独禁法に抵触する目安としたようだ。

◆東海地区
東海地区では17年2月28日、三重県内2位、3位の三重銀行(四日市)と第三銀行(松阪市)が
経営統合することで合意。今年4月2日、持ち株会社「三十三FG」を設立された。両行の総資産(第三四半期/17年12月期)を単純合算すると4兆556億円で、県内トップの百五銀行(津市)の約5兆7,300億円を追う数字となる。

◆近畿地区

◆ふくおかFGと十八銀行が経営統合発表した1カ月後の2016年4月1日、四国の徳島銀行と香川銀行が経営統合して設立した「トモニHD」(本店:香川県高松市)に、大阪に本店を構える大正銀行がその傘下に入った。
・トモニHDが規模の小さい大正銀行と経営統合したのは、四国4県の総人口が約380万人に対し、大阪府は約882万人(18年3月1日現在)と2倍強。人口減少が激しい四国で、規模の小さい第二地銀が生き残ることは厳しいと判断したためと見られる。
 そのため新たな市場を求めて大阪に新店舗を開設するよりも、大阪府内に20店舗を有する大正銀を傘下に収め、人・モノ・カネを手に入れた方が早いと判断。
 一方、大正銀行も「日銀のマイナス金利政策がこのまま継続すると単独では生き残れない」状況にあり、「渡りに船」の経営統合であったといえるのではないだろうか。将来的には徳島銀行と大正銀行は合併する予定となっている。

◆2017年9月26日、りそなホールディングス傘下の近畿大阪銀行と三井住友銀行の子会社である関西アーバン銀行・みなと銀行は、りそなHDの完全子会社になることで最終合意。
・17年11月10日、金融庁より3行の持ち株会社設立の承認を得て、今年4月1日、近畿圏では府県を超えて経営統合した「関西みらいFG」が設立された。三井住友銀行としては2行を手放すことのほうがメリットが大きいと見たようだ。

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 筆者は2018年1月31日付のNetIB-Newsで、『AERA「銀行の寿命はあと7年」を検証する』を掲載した通り、銀行のなかでも、とくに地銀は金融再編を進めないと生き残れない状況になっている。
 金融庁が地銀の経営統合を積極的に推進するなか、公取委は自身の存在意義のためにも、県内銀行同士が経営統合する場合、シェアが80%以上のものについては慎重に審査する方針を決めたものと見られる。

(つづく)
【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】

 
(中)

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