2024年04月24日( 水 )

阿久根市、旧国民宿舎跡地を中国資本と協働で再開発~公募は選定者なし

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旧国民宿舎あくね

 鹿児島県阿久根市が、旧国民宿舎の跡地について、中国資本の不動産投資会社と協働して再開発に取り組む考えであることがわかった。

 阿久根市は、昨年9月29日から、「旧国民宿舎施設等跡地活用事業者」の公募を開始。同年12月22日までに2事業者から応募が寄せられた。応募したのは、市内の25の企業および個人が出資して設立した(株)あくね舎と、香港に本社を置く不動産投資会社HKRインターナショナル(香港興業国際集団)の日本法人(株)HKRジャパン。

 募集の条件には、市が旧国民宿舎の施設を解体撤去し、更地となった跡地計約2万m2を30年間無償で事業者に貸し付けることや、温泉施設を10年間無償で貸し付けること、旅館営業に関連する営業以外の目的に使用しないことなどが含まれていた。

 応募した2事業者は、富裕層をターゲットとした施設整備の構想を示していたが、地元あくね舎が、高価格帯の宿泊施設となる戸建て宿泊棟を10棟整備するといった具体的計画を示したのに対し、HKRは、旧国民宿舎跡地だけでなく、周辺地域一体を大規模に開発する“構想”があるとするばかりで、具体的なプランは未提示。選定委員からは「現段階では判断がつかない」といった意見があがっていた。

 当然ながら、具体的にどうなるかわからない計画に、市民の財産である市有地をタダで貸すというわけにはいかない。ところが、西平良将市長は、6月の市議会で、HKRと協働して取り組む考えを発表した。阿久根市によると、事業者の公募は「選定者なし」で終わらせる一方、HKRとは、ホテルありきではなく、再開発に関する話を進めていくという。

 西平市長は、あくね舎の提案に「中長期的な事業採算性において厳しい」とし、「市の追加的支援などで市民に大きな負担が向けられる可能性が否定できない」と判断。一方、HKRについては「どのように具現化していくかが現段階で判然としない」としながらも、「より明るい展望と将来性がある事業構想を提案されたHKRとの間で、協定を締結することなどにより協働して取り組んでいきたい」と発言している。

 公募が成立しない場合、応募者から事情を聞き、条件の変更も視野に再公募を行うのが通例だが、そうしたプロセスも経ないまま、市長の独断で事実上の随意契約を行おうとしている。市長と中国資本との関係が疑われても仕方のない状況だ。

【山下 康太】

 

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