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2018年07月25日 07:02

中内ダイエーなくして、福岡がここまで発展することはなかった(15)~高塚猛のビジネス人生の2つの『If』(4) 平成の30年を振り返る~福岡の賢人経営者5人 

 誰もが生涯において、人生の決定的な岐路に立つ選択を余儀なくされることがある。平々凡々な人生を送る人は、その決断をしないままに終わる。高塚猛の場合には、その後の人生を左右する大きな選択が2つあった。(1)福岡ダイエー事業3点セットの再生案件を引き受けること、(2)ダイヤモンド社再建の大役を快諾することの2つである。何事も『If』(もしも)を論じても元には戻れないのだが、(1)での真逆の盛岡居残りを選択していたら盛岡の衰退は多少なりとも食い止めることができていたであろう。(2)の選択をしていたならば、ダイヤモンド社は現状以上に再生をはたしていたことは間違いない。

猛の苦労が虚しい

 NetIB-Newsでは、高塚猛の下で活躍した幹部たちの本音の証言についても連載した。「彼らが猛の指導の旗の下で、いかに意識革命されて働くようになったのか」というドキュメントである。幹部Y氏は初期の段階では非常に反発していた。ところが、結局のところ猛に丸めこまれて、ダイエー福岡3点事業の再生の先導役を務めた。これら大の男たちがいまだに猛を尊敬していることには、改めて驚くばかりである。それだけ猛の企業再生技術・志は、偉大であったのであろう。

 企業再生というのは、金のないところからすべて始まる。経費を切り詰め、社員たちには高い使命感を植え付けて、より安く、より時間労働を強いて利益を得ることが、再生のための基本手法である。1999~2003年まで、猛も深夜まで働いたし、幹部たちも不眠不休の活躍をした。今であれば、「ブラック企業」と烙印を押されて社会的制裁を浴びるだろう。猛の再生手法も、時代的制約があるのである。

 それよりも何よりも、潤沢な資金力の前では猛の苦労が虚しくなる。

<第1事業:球団事業>
 福岡ソフトバンクホークスは2017年のパ・リーグを圧勝で優勝し、日本シリーズも制して日本一に輝いた。これは、ソフトバンクの資金力によるものだ。
 ソフトバンクが球団を買収したのは04年10月である。猛が福岡ダイエー3点事業から放逐されて以降の出来事だ。人の記憶は薄れやすい。「ホークス優勝万歳!!」と狂喜しているファンの頭のなかに、高塚猛の名前は跡形もない。儚いものである。

<第2事業:モール事業>
 旧ホークスタウンの跡地は三菱地所が買収した。マンションと大規模ショッピングモールが誕生する。ダイエーは、資金が枯渇して中途半端な事業しか展開できなかったが、今回は必ず成功するだろう。

<第3事業:ホテル>
 このホテル事業が一番低迷していたが、ヒルトン運営によって、ようやく採算軌道に乗ったようだ。インバウンド客に助けられている一面もある。

 3事業ともそれぞれ切り売りされたが、それぞれ圧倒的な資金力を駆使して、事業を発展させる勢いを見せている。

人それぞれの人生ドラマ

 03年12月に、ダイエー福岡3点事業がコロニー・キャピタルへ売却。運営会社を(株)ホークスタウンとした。3点事業の第1である球団事業は、04年10月にソフトバンクに売却された。孫氏への橋渡しは、T氏がユニクロ・柳井オーナー経由で行ったと言われている。ホテル事業・シーホークホテル&リゾートはJALリゾートシーホークに模様替えとなった(10年6月からヒルトンホテル運営となる)。モール事業は(株)ホークスタウンが担った。この会社は、コロニー・キャピタルの福岡事業実行部隊と見做してよい。

 この3事業の分割で、社員たちはバラバラに転籍していった。(1)まず猛追放の一端を担ったメンバーは、ホークスタウン勤務となった。ただ、この会社も事業縮小となったから社員数は減っていく。その功労者の1人はオーナー会社を渡り歩いたが、「拾ってくれたオーナーが必ず死ぬ」という伝説を築いた。猛からセクハラを受けたとされる女性たちもそれぞれに有能だったから、すばらしい環境の職場へ転職した。

 明暗を分けたのは、ホテル事業と球団事業、それぞれに転籍した従業員たちである。ホテル事業の方はJALの運営当時は業績が悪く、従業員の給料が長い間据え置きになっていたそうだ。ヒルトン運営になってから業績は回復したものの、地元採用のスタッフへの還元意欲に乏しいという背景があり、期待した対価を得ることができないようだ。球団所属からホテルの転籍した元従業員は後悔する。「あのとき、球団に居残っておれば良かった」と。

 球団に残った1人は、「たしかに仕事はきつい。高塚さんのときよりきつかろう。ただし、成果査定がしっかりした納得できるものがある。この10年間、確実に収入は増えてきているから、待遇面では満足している」と語る。

 OBの1人が証言する。「ホテルと球団の元同僚たちとで飲む機会があった。当然、待遇面の話になった。耳にした話では、ホテル側の待遇には、元同僚たちは不満をもっているようだ」。人それぞれの選択が、明暗のドラマを産んだのである。

 猛の側近たちは、やむを得ず企業から放逐された。猛から抜擢を受けた彼らは、それぞれに秀でた能力と人脈をもっている。財務面での経営コンサルで繁盛している例もある。上場会社の執行役員付きの人材として、平然と座って実績を挙げているケースもあり、これはさすがだといえるだろう。これらの猛の側近・猛者たちは、自らの運命を切り拓く連中であるから、「球団に残っておれば良かった」云々の泣き言は一切言わない。せめてこのくらいの器量をもとう。

(了)
(シリーズ・続)

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