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2018年08月10日 07:02

激変するエネルギー業界で非エネルギー事業シフトを加速(中)

西部ガス(株)

ホテル事業への進出を決断

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 今年3月、東京電力は液化石油ガス大手の日本瓦斯(日ガス)への出資を発表した。すでに両社は電力ガス販売で提携関係にあったが、ライバルとの競合激化を見込して競争力を高めるためだ。首都圏では中部電力と大阪ガス、関西電力と東京ガスも連合を組んでおり、エネルギー市場の争奪戦が繰り広げられている。従来が既得権に守られた地域独占の事業モデルだったため、他地区との連携でシェア拡大を狙う戦略となる。本州は連合3グループによる3つ巴の様相だが、九州は九電と西部ガスの一騎打ちだ。ただ前述したように、規模感で劣る西部ガスは分が悪い。こうした状況を見越して、西部ガスは「食」と「住」に重点を置いた多角化戦略を採ってきた。

 16年11月に公表した中期経営計画では、「エネルギーとくらしの総合サービス企業グループ」を目指すとしており、従来のエネルギーサービス事業に加え、住宅建築・販売、リフォーム、マンション管理などのくらしサービス事業、飲食店、商業施設開発、高齢者サービスなどのマルチバリューサービス事業の3本柱での事業展開を打ち出している。九州八重洲(株)や(株)エストラストが「住」を代表する企業で、(株)八仙閣や福岡中央魚市場(株)などが「食」を代表する企業だろう。こうした非エネルギー事業は15年度での売上高構成では20%程度に過ぎないが、26年度には50%程度にまで高めていく方針である。この取り組みの一環として、ホテル事業への参入も決めた。

 今年6月、西部ガスグループの西部ガスリビング(株)が、熊本市で98室のホテル運営に乗り出すことを発表した。インバウンド需要で長期的な発展が期待できることから検討を続け、ついにホテル事業への参入を決めたという。開業は19年夏の予定だ。エネルギー事業はダウンサイジングの戦略を採りながら、その他分野で基盤を構築する必要があるからだが、スピード感に欠ける印象は拭えない。手堅いといえば手堅いが、時代の変革スピードを考えれば、もっと早くホテル事業に参入していてもよかったのではないか。

手堅さは時代に合った経営か

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 前述した中期経営計画では、19年度(20年3月期)の売上高目標を2,000億円としている。経常利益目標は17~19年度の3年合計で320億円。ROA(総資産利益率)2%、ROE(株主資本利益率)8%、自己資本比率24%、有利子負債残高を2,200億円としている。売上高は微増だが、有利子負債を少し圧縮し、資本効率を大きく向上させるという方針だ。実績から考えれば、効率化に重点を置いた目標である。

 18年3月期の実績を見てみよう。売上高は1,966億円で、2,000億円まで僅かである。経常利益は108億円で、同水準を維持すれば3年合計320億円はクリアできる。ROAは1.68%、ROEは8.15%と着実に目標に近づいている。自己資本比率も21.3%まできた。有利子負債も2,265億円まで縮小している。

 キャッシュフローの推移を見ても堅調で、営業CFも安定しており、一定水準の投資が行われていることも投資CFでわかる。特徴的なのは財務CFで、16年3月期以降は一貫してマイナス、つまり借入金の返済に勤しんでいることになる。有利子負債の圧縮も目標の1つであるので、財務体質の強化を優先的に考えている表れだろう。

 実績を踏まえて考えれば、中期経営計画の20年3月期の目標数値は間違いなく達成されるだろう。むしろ目標としてみた場合、低すぎる感じもする。さらにいえば、時代の変革スピード、イノベーションの進展を鑑みた場合、有利子負債の圧縮よりも、積極的な投資戦略が必要なのではないか。ROAやROEの数値向上も、資産効率の向上よりも利益額の増大に重きを置くべきだ。率としての数値は同じでも、利益額が大きいほうが株主にとっての還元は大きくなるし、それが上場企業に求められるものでもある。既得権に守られてきた業界の経営戦略が染みついているのかもしれないが、時代の大きなうねりがきており、今までの常識が通用しなくなり始めたことは意識しておく必要があるだろう。

(つづく)
【緒方 克美】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:酒見 俊夫
所在地:福岡市博多区千代1-17-1
設 立:1930年12月
資本金:206億2,979万円
売上高:(18/3連結)1,966億2,100万円

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