世界を熱狂させているアイドルグループ防弾少年団（BTS）（前）

日韓ビジネスコンサルタント　劉明鎬（在日経歴20年）

　皆さまは「防弾少年団」というボーイズグループの名前を聞いたことがあるだろうか。名前を聞いただけでは、ボーイスカウトのような団体ではないかと勘違いしやすい。しかし、防弾少年団は韓国だけでなく、欧米でも圧倒的な人気を得ている韓国のヒップポップグループである。グループ名の由来は、10代や20代の若者に向けられた偏見や社会的な抑圧をなくし、自分たちの音楽を守って行くという意味が込められているようだ。

　2013年、韓国でデビューをはたした防弾少年団（通称BTS）は全員がイケメンで、7名のメンバーで構成されている。韓国のアイドルはデビューするまで所属芸能事務所で、まずは練習生としてレッスンを受けることになっている。そこで歌やパフォーマンスが十分成熟したらデビューするというのが一般的である。
　しかし、防弾少年団は韓国の大邱や光州のアンダーグラウンドでダンサーやラッパーなどで活躍していた10代半ばの若者が集まって結成されたグループで、練習生は経験していない。彼らは若者の代表として、今彼らが直面している心の葛藤、社会的な矛盾、個人的な悩みなどを音楽の歌詞を通して素直に表現しているが、それが大衆の圧倒的な支持を集めているようだ。

　彼らはコンセプトのある歌詞とクオリティの高いパフォーマンスで世界中の多くの人々の共感を呼び、爆発的な人気を得ている。2017年にはワールドツアーで55万人の観客動員に成功し、発売したアルバム「Love Yourself 承　Her」は149万枚の売上を記録した。 今までビルボードの表紙を飾ったことがある韓国人は「カンナムスタイル」のPSY（サイ）がいるが、防弾少年団は今年2月に、米ビルボードの表紙を飾った。
　彼らが北米で最も注目を浴びるきっかけとなったのは、『Billboard Music Awards 2017』のトップ・ソーシャル・アーティストを受賞したこと。さらに、2018年5月18日にリリースされた防弾少年団のアルバム「LOVE YOURSELF 轉Tear」 はアメリカ｢ビルボード200｣チャートで1位を獲得した。これらは防弾少年団の世界的な人気の裏づけになっている。

　韓国でも防弾少年団はアルバムが発売されるたびに、国内音源チャートの1位を総なめしている。ご承知のように、アメリカのビルボードチャートで外国の曲が1位になるのは簡単なことではない。そこには言葉の壁が立ちはだかっているからだ。ビルボードチャートにランクインするためには、アメリカでのストリーミング回数、ダウンロード回数、アルバム販売数、ユーチューブのアクセス数、ラジオでの放送回数などが集計されて決定される。そのなかでもとくにハードルが高いのは、ラジオの放送回数のようだ。ラジオで放送されるためには、歌詞の内容がうまく伝わって、アメリカの視聴者の心を動かさないといけないからだ。このような要素がすべて評価されてはじめて、トップ・ソーシャル・アーティスト賞を受賞できるのだ。

（つづく）