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2018年09月05日 15:12

後世に伝えるべき日本の食文化や心を残す(前) 時代を紡ぐ企業110社 

(株)てら岡

本格的茶事を開催し日本のもてなしの心を伝える

 舞鶴公園の桜が咲き誇った今年3月下旬、「日本料理てら岡中洲本店」5階では、茶事が開催された。数寄屋造りの凛とした空気のなか、茶座敷に集った10人ほどの客が、伝統的な茶懐石料理と茶を楽しんだ。店の主である寺岡直彦会長が茶懐石料理に腕を振るい、裏千家茶道の志村宗恭教授が喫食などのマナーを指導するというものだ。茶事を主宰する亭主は、茶事を開催する何日も前から主旨に合わせた書画や掛け軸を飾るなど茶室を調え、料理に使用する食材や器を吟味する。
 当日は、茶室の内外を清め、花を生け、香を焚くなど心を配る。茶事は、茶の湯において正式な客のもてなし方といわれる格式の高いもので、さまざまな決まりごとがある。寺岡会長は、「日本人の伝統文化である本格的な茶事を残していきたいと考えていたが、志村先生のお力添えをいただき共同での企画が実現した」と笑みがこぼれる。

 当面は、初釜や夜咄、初風呂、朝茶、口切など代表的な茶事を開催する予定だ。初回は、ごく限られた人数で開催したが、SNSで知った料理人や茶道関係者を始め、多くの人から問い合わせが寄せられている。

寺岡会長の集大成ともいえる7階建て新館

 茶事を開催するてら岡中洲本店は昨年10月、新築オープンした。旧館を取り壊し、新築したものだ。外装は城をイメージし、日本の伝統的な壁塗りの様式であるなまこ壁に仕上げた。サビ石を流れる滝に導かれて店内に入ると、1階のエントランスホールでは、硯石などに使う玄昌石の一枚石やガラスケースに納められた馬星華画伯の屏風「黄山」、左に向かって駆け上がる馬群の彫刻、エレベーター前の床に埋め込まれた宝石のような色艶の「松の木の化石(珪化木)」など豪華なもてなしに目を奪われる。創業時に使っていた器や、29歳の若さで、太宰府の歴史史料館において、皇太子殿下(現在の天皇陛下)ご夫妻に献上する料理を担当した際にいただいた燗瓶と猪口も展示するなど、寺岡会長が注ぎこんだ情熱を感じながら期待感が高まる。

 2階は、掘り炬燵式の広間「山笠の間」と「木立の間」で、2間を合せると100人が収容できる中洲本店で一番広い宴会スペースとなる。ガラスケースに納められた屏風「賤ヶ岳の合戦」「関ヶ原合戦図」が、華やかさと重厚感を演出する。アニーグループ(二枝崇治社長)が展開している光冷暖システムも採用している。光エネルギーによって室内温度がほぼ一定となる温熱環境を実現する次世代型冷暖システムで、ヒートショック対策などでも力を発揮する。風や運転音もなく静かな空間をつくり出す画期的なものだ。現在、国内をはじめ海外の国々で特許を取得している。3階は、純和風。一曲二双の鶴の屏風が華やかさを演出する鶴の間を始め、歌川広重の「東海道五十三次」を有田焼辻一堂氏が写した寿の間の絵皿が目を楽しませてくれる。4階は、2名から利用できる半個室と個室。弁柄の壁にティファニーのステンドグラスの光が、幻想的な雰囲気をつくり出す。

 5階は、旧店舗にあった数寄屋造りの茶室を解体し、新館で再現した茶座敷である。2間ある茶座敷の間を襖で仕切るのではなく、あえて防音用のガラスを三重に入れ、馬星華画伯の桜の屏風と紅葉の屏風を配した。
 6階は、庭付きの部屋。四季の移ろいを愛でながら、野鳥や虫の音を楽しめる。部屋の壁は、茶室などに使用する最高級の聚楽壁に稲穂を鏝(こて)で押しつけて、固まる前に型を抜く押し絵を施した。7階は、従業員の更衣室や倉庫、予約センターなどに使っている。

 新館では、修行時代から使ってきた道具や器、美意識に訴えた品々を惜しげもなく使うなど、会長の集大成ともいえる世界をつくり出した。そこには、「良い物を残し、伝えていきたい」という寺岡会長の思いが溢れている。連日、常連客を中心に幅広い層の客が店を訪れる。海外からの客も多いという。

(つづく)

<COMPANY INFORMATION>
代 表:寺岡 直彦
所在地:福岡市中央区渡辺通5-2-10
設 立:1981年8月
資本金:5,000万円
TEL:092-714-4411
URL:http://www.teraokagroup.co.jp

<プロフィール>
寺岡 直彦(てらおか・なおひこ)

 1960年、日本料理の修行を始め、69年、日本返還前の沖縄「料亭 春駒」の料理長に就任。その後、福岡に移り、73年、皇太子殿下(現在の天皇陛下)への献上料理担当の栄に浴する。76年に福岡市博多区に「味処てら岡」を創業。以来、日本の伝統料理の継承、新しい日本料理の提供を料理と人材育成の面で実践し続けている。現在、代表取締役会長。

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