2024年04月18日( 木 )

権力の走狗に成り下がった鹿児島トップシェアの地方紙(後)

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(株)南日本新聞社

減収傾向に歯止めかからず

 鹿児島県下で圧倒的なシェアを誇る同紙だが、ほか紙の例に漏れず、発行部数の低迷が続いており、2000年ごろの約40万部からすると、ここ20年足らずで約10万部も落としていることになる。また、現在同紙は朝刊のみを発行。以前は夕刊も発行していたが、夕刊の発行部数が約2万3,000部程度にまで落ち込み夕刊での赤字が続いていたことなどを理由として、09年2月末をもって廃止となっている。

 発行部数の落ち込みは、業績面にも表れている。近年の売上高の推移を見ると、急激な落ち込みこそないものの、直近5期では毎期右肩下がりで推移。ここ5年で売上高を約13億円落としている。しかし一方で、減収が続くなかで合理化や人件費などの圧縮により利益面の確保に腐心しており、やや減益傾向にはあるものの、毎期一定の最終利益を計上。財務面も相応に安定している。

 なお、同社には関連会社として、広告代理店業務を担う(株)南日本新聞開発センター(鹿児島市、和田茂代表)のほか、南日本新聞の販売および折り込みチラシなどの取り扱いを行う南日本新聞販売(株)(鹿児島市、佐潟隆一代表)、日刊新聞の印刷・発送業務を担う南日本新聞印刷(株)(鹿児島市、佐潟隆一代表)、さらにインターネットデータセンターなどの情報サービスを提供する(株)南日本情報処理センター(鹿児島市、松窪寛代表)の4社がある。これら4社はいずれも、親会社である南日本新聞社の威光の下、それぞれ安定した事業基盤を確立。業績面でも、それぞれ相応の実績を積み重ねている模様だ。

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権力に与する御用新聞

 かつては、中央政府に対して鋭い論陣を張って官憲から目を付けられるなど、権力におもねることのない高い志と使命感の下に、独自の主義・主張を報じることに勤しんでいた同紙。だが、時代の流れとともに、強大な権力に与するような姿勢へと舵を切り、今や県や市、さらには有力企業などの“御用新聞”としての役割を担うところまで“堕ちて”しまったようだ。

 それが如実に表れているのが、同紙の報道姿勢。たとえば、東日本大震災とその後の原発事故によって国内で反原発ムードが高まっていたなか、真っ先に九州電力・川内原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働が確実となるや、南日本新聞で組まれた特集記事の内容は、原発擁護および礼賛のオンパレード。周辺住民が原発に対して抱く不安な心情など、どこ吹く風の紙面づくりを行った。また、問題が噴出している鹿児島県の県営住宅についての記事を掲載すれば、その内容は県の言い分をそのままひねりもなく載せたもの。住民の意見は無視したうえ、新聞社としての独自の見解も見当たらないありさまだ。

 このように現在の同紙は、権力側のご機嫌取りに終始して、事の実相を歪める記事ばかりを乱発。“権力の監視役”たるメディアとしての使命を忘れ、最も大事な読者をも蔑ろにし、行政や有力企業などの“強者”にばかり媚びへつらうさまは、もはや権力の走狗に成り下がったといっても過言ではあるまい。ましてこれだけネット環境が普及し、個々人でも容易に情報発信が可能になっている現在、一方的に垂れ流される偏った報道を鵜呑みにする読者ばかりではない。こうした報道姿勢を続ける限り、ほか紙と同様に発行部数の落ち込みに歯止めがかかることはなく、いずれ県民からも見放されてしまうことだろう。

 鹿児島県では圧倒的なシェアを有する同紙ではあるが、そうなる前に今一度、創刊時の原点に立ち戻り、高い志の下、読者に寄り添う新聞へと生まれ変わらなければ、同紙の未来や存在意義はない。

(了)
【坂田 憲治】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:佐潟 隆一
所在地:鹿児島市与次郎1-9-33
設 立:1899年7月
資本金:4億8,380万円
売上高:(17/9)105億3,668万円

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