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2018年09月21日 13:31

【片岡亮の業界インサイダー】ワンコリア実現の可能性で、脅かされる日本の立場

 5月の世界卓球選手権で急遽結成された韓国と北朝鮮の南北合同チームは、中国ペアを破って優勝。朝鮮半島を描いた「統一旗」を振って応援したソウル市民から大歓声が巻き起こっていた。ジャカルタで開催されたアジア大会でもバスケットボール女子、ボート、カヌーの3競技で合同チームが結成され、カヌーでは金メダルも獲得。朝鮮半島情勢の変化によるもので、スポーツの政治利用に見えるところでもあった。ただ、韓国民の間でも下落傾向にあるといわれていた南北統一への期待感が高まったのも事実だ。

 当然ながら両国が「すぐに」統一することは現実的ではなく、解決すべき問題は山ほどある。韓国には統一プランをシミュレーションする研究機関があるため、話を聞いてみた。
 「近代の併合例として、ベトナムとドイツなどの例を見ると、ベトナムでは共産主義の北が南を併合する過程で国民の資産が没収され、ボートピープルと呼ばれる避難民までも生みました。ドイツでも東西の経済格差から多数の失業者が発生し、経済混乱が続きました。国の統一にはかなりの苦しみを覚悟しなければなりません。世界11位の経済規模を持つ韓国と56位の北朝鮮では、その溝を埋める作業こそ最重要課題になります。最近は損得勘定だけで考える若い層の『戦争にならなければ、いまのままでいい』とする意見が増えています。ただ、専門家として言わせてもらえば、その損得勘定も最終的にはプラスになると試算できます」(ソウル南北統一研究所、キム・ジンス氏)

 同所の研究では、たとえば北の退役軍人が農業に従事すれば、先進国でも低水準である韓国の食糧自給率を一気に伸ばし、日本以上にできるのだという。
 「北は識字率でも証明できるように高い知的レベルを維持しており、独自に核をつくるほど高い技術力もあります。韓国の合理化された産業と一体化させれば、日本や中国を超える勢いが生まれます。人口推移でも韓国は少子高齢化傾向にありますが、北朝鮮は増加傾向。日本はこのまま人口減少すれば2065年には8千万程度と予測されていますから、人口でも逆転現象が起きますよ」(キム氏)

 そしてキム氏は、南北統一が核の問題を解決する有効打になる可能性も指摘する。
 「日本は被爆国にもかかわらず昨年、核兵器禁止条約に反対しましたが、これは日本ですら核保有したいというあらわれでしょう。だから日本が非核化をいくら叫んだところで説得力がないんです。北朝鮮も核拡散防止条約に加盟していたのに、国際制裁を受けながらも核を完成させました。国際協力などなくとも核をつくれることを証明したんです。これに他国が追従することを阻止しないと、本音では核を欲する世界中に核ドミノが発生しかねません。北の放棄を期待するより、南北合併のワンコリアに条約を守らせる方が早いでしょう」(同)

 ただ、こうした見方に対して「人口7千万人を超える核保有国が誕生するのはかなり危険」と話す日本の専門家もいる。軍事ジャーナリストの青山智樹氏は「統一国家が核を速やかに廃棄しなければ、アメリカによる『核の傘』も不要になり、米韓相互防衛条約がなくなって、むしろ危険度が増す可能性もある」と話す。
 「ただでさえ韓国は軍備増強していて、現在保有する3隻のイージス艦を倍に増やす計画ですし、2隻目の揚陸艦にはF35B戦闘機の搭載計画もあります。一体どこでそんな上陸作戦を見据えているのだろうと思いますが、中国、ロシアに対しては戦略上無意味なので、残るは日本しか標的がないんです。北との合併で経済と人口問題が解決した上、軍事力が強化されたら日本にとってはこの上ない脅威になるのでは」(青山氏)

 前出研究所の試算では統一費用の約500兆円の大半を韓国側が拠出することになるという懸念や、北朝鮮側に動機が少ないことから、統一は現実的な話ではないと見られてもいる。しかし、「世の中、何が起こるかはわからない」とキム氏は話す。これは青山氏も「日本と戦争状態にはない北がいまにも日本に攻めてくるというような非現実的な話を想定するなら、同時に統一国家ができることなど、あらゆる事態を想定して独自の立場をとった方がいい」と話す。現在、北朝鮮をめぐってはアメリカと中国の綱引きが続き、日本はその危機を煽って政治利用するばかりだ。万一にもワンコリアが実現すればむやみに対立するわけにはいかなくなるのだから、そこは幅広い対応力を身につけておく必要があるということか。

▲韓国の文在寅大統領と金正淑夫人は18日午前、
韓国大統領として初めて平壌入り。20日午前には、
金正恩朝鮮労働党委員長や金委員長の妹・金与正氏らとともに
中朝境界の「白頭山」を訪れた
(韓国大統領府・青瓦台公式HPより)

【片岡亮/NEWSIDER】

<プロフィール>
片岡 亮(かたおか・りょう) 
 1971年生まれ。アメリカでの商社マンを経て、スポーツ紙記者になりながら、K-1にも出場した元格闘家という異色のフリージャーナリスト。社会、芸能、スポーツ、裏社会まで幅広く取材。70カ国以上の海外取材歴もあり、夕刊紙や週刊誌のほか、テレビコメンテーターも務める。拾った猫5匹を育てる愛猫家。通称・ジーパン記者。 

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