2024年04月17日( 水 )

自由診療の現場から~再生医療・PRP(自己多血小板血漿療法)(前)

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福岡整形外科病院 碇 博哉 医長

膝・腰・肩……注目を浴びる整形外科

 福岡整形外科病院では、現在注目を集めている再生医療の一種「PRP療法」の導入を進めている。また碇医長は、同病院の医師2名とともにJリーグ・アビスパ福岡のチームドクターも務めている。商売道具である身体には人一倍気を遣うプロアスリートたちのケアには、最新医療の知識と技術も十二分に生かされている。

 ――まず、福岡整形外科病院について簡単にお聞かせください。

▲福岡整形外科病院 碇 博哉 医長

 碇 当院は、整形外科の単科病院です。現在年間1,800以上の手術症例があり、1日200名以上外来の患者さんが、受診されています。入院病棟のベッド数は175床。当院は整形外科単科の病院ですから、小回りの利く対応が強みだと考えています。検査を行い、手術が必要であれば当日手術を行うこともできます。

 ――福岡整形外科病院には、多くの医師が在籍していらっしゃいます。それぞれご専門がおありと思いますが、碇先生の専門分野はどちらになりますか。

 碇 僕自身は、スポーツ障害と脊椎です。それと、膝は全員担当しますから、こちらもしっかり学んでいます。そこに新たにPRP療法が加わるというかたちになります。

 ――最も多い手術症例となると、どのようなものでしょうか。

 碇 やはり、膝が一番多くなりますね。もちろん、脊椎やほかのさまざまな関節も、ほぼすべての手術を行っています。そこで現在最も期待されているのが、PRP療法です。

最先端の再生医療・PRP療法

 ――PRP療法とは、どのようなものでしょうか。

 ※クリックで拡大

 碇 PRPとは、多血小板血漿(Platelet-Rich Plasma)のことです。患者さんご自身の血液から分離したPRPを患部に注入することで、ケガや病気で傷ついた組織の治癒を早めようという治療法です。

 ――血小板というと、ケガをしたときにできるかさぶたをつくる成分ですね。

 碇 そうですね。人間の血液は、酸素を運ぶ赤血球、外敵を排除する白血球、ケガをした際に傷ついた組織を治癒する血小板と、これらを含む血漿という液体成分などからなっています。患者さんから20㎖ほど血液を採取し、これを特殊な遠心分離機にかけ、PRPを抽出します。PRPには通常の血液に比べて血小板が6~9倍含まれ、血小板由来成長因子(PDGF)、形質転換成長因子(TGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)など、細胞の複製・増殖や血管形成を刺激する成長因子も大量に含まれています。

 このPRPを、患者さんの患部に直接注射するのがPRP療法です。PRPを患部に注入することで、細胞の増殖を促し、毛細血管の新生が起こります。これによって、患部のリモデリングが起こり、修復能が働くことで軟骨や腱の組織が修復され、改善していきます。

 ――どのような病気に効果があるのでしょうか。

 碇 多くの方にご期待いただいているものとしては、変形性膝関節症があります。ひざは大腿骨、脛骨、膝蓋骨からなる関節で、ほかの関節同様に軟骨によって滑らかに動くようになっています。この軟骨がすり減って痛みが出る、というのが変形性膝関節症です。一般的に、すり減ってしまった軟骨は再生しませんが、PRP療法によって軟骨が再生し、一部修復されたという学会報告もあります。

 また、スポーツ選手に多い肘や膝の腱損傷、腱炎、靭帯損傷にも効果が認められます。メジャーリーグでプレーしている大谷翔平選手、田中将大選手がPRP療法を受けたことで、よく知られるようになりました。医師によっては肉離れなどの筋肉系の障害に利用する場合もあります。

 ――いわゆる再生医療の一環になるのですか。

 碇 2014年に施行された「再生医療などの安全の確保などに関する法律(再生医療新法)」で定められた再生医療にあたります。関節内に注入する場合は第2種再生医療(中リスク)、腱に注入する場合は第3種再生医療(リスクの低いもの)にあたります。再生医療新法の施行までは、PRP療法はさまざまな医療機関で行われていましたが、法整備によって行える医療機関に制限ができました。当院は現在厚労省に対して、2種と3種の認可を得られるよう申請手続きを行っています。

(つづく)

<INFORMATION>
(医)同信会 福岡整形外科病院

所在地:福岡県福岡市南区柳河内2-10-50
TEL:092-512-1581
FAX:092-553-1038
院 長:吉本 隆昌
病床数:175床(一般101床・地域包括ケア病棟74床)
診療科目:整形外科・リウマチ科・リハビリテーション科・麻酔科
診療日:月~土曜日
受付時間:平日 午前8時30分~11時30分 午後1時30分~4時
     土曜 午前8時30分~11時30分

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