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2018年10月12日 13:11

本庶佑氏、がん免疫療法の研究でノーベル賞を受賞~ノーベル賞で東大が京大に勝てない理由

 京都大学の本庶佑(ほんじょ・たすく)特別教授らの、2018年のノーベル生理学・医学賞の受賞が決まった。これまでのがん治療は、手術や放射線治療のほか、がん細胞そのものに直接働きかける化学療法が中心だった。今回、ノーベル賞を受賞した本庶教授の研究から生まれた小野薬品工業のがん免疫薬「オプジーボ」は、これまで世界のほとんどのがん専門家が考慮に入れなかった免疫療法でがんを克服する革新的な薬だ。

 ノーベル賞を受賞した本庶教授は、誰もやっていないオンリーワンを目指すことが独創的な研究への近道だと語っているが、画期的ながん免疫治療薬「オプジーボ」を生み出したがん免疫研究の発見に至るまではどのような道のりだったのだろうか。

 本庶教授が研究を行い、多くの学生を指導しているのは京都大学の「免疫ゲノム医学」研究室。一般的に、東京大学は「官」に強く、京都大学は我が道を行く人が多いといわれる。「オプジーボ」が登場するまで、ほとんどのがん専門家はがんに免疫療法の効果があるとは考えていなかったため、今回のノーベル賞受賞はこれまで注目されていなかった視点で研究に取り組んだ成果ともいえる。本庶教授の「常識にとらわれずに今までになかった新しい価値観をつくる」という姿勢は、本庶教授が日々研究を行っている京都大学の校風も大きく影響していると考えられる。

 京都大学とはどのような大学なのだろうか。まず、京都大学の校風を一言で表すと「自由」。つまり、自主性を大切にして、何事も自分で考えて決めることを尊重する教育方針だ。学生生活を送るにしても、研究を志すにしても、大学がその方向性を決めることは少ない。そのため、人はこのやり方が好きだからとか、この分野に興味があるからという自分の意思で行動する。また、他者が自分とは違った意見をもっていることに寛容な人が多いのも特長だ。そして、お互いの意見を交えて議論することが大好きで、考え方が違っていれば話し合えば良いと考えている。そのため、常識にとらわれずに人がもって生まれた個性を尊重し、長所を伸ばす仕組みが整っているといえる。

 京都大学の自由な校風は、自分の考えで決めて良いというポジティブな効果を生む反面、自分で決めて行動したことの結果は自分で受け止めるという責任をともなう。もし進む道にレールを敷いてくれる大学ならば、そのレールに乗っていれば成果を得られるだろう。一方、京都大学では自主性が尊重されるため、自分で判断したことの結果を受け止める経験をたくさん積むことができ、物事を判断する力が磨かれると考えられる。

 研究者という仕事は、ノーベル賞などの華々しい一面はあるものの、成果を出して表舞台で発表することは仕事の中のほんの一部である。研究者の仕事のほとんどは、まだ知られていない課題に地道に取り組む時間であり、「発見」や、今までになかったものをつくり出す「発明」を求めて、道がないところに道をつくっていく行程でもある。研究で成果を上げられるかどうかは、今まで誰もやっていなかったことに興味や関心をもち続けて取り組めるか、つまり自分の道を貫くことができるかにかかっている。何ごとも自分で考えて決めるという個人の意思を尊重する京都大学の校風が、優れた研究者を育てていることはほぼ間違いないだろう。

 ノーベル賞を受賞するような研究では、それまで注目されていなかった観点からの取り組みが大発見につながった例も多い。研究は、成果がかたちになるまでに多くの年月を費やす。そのため、いつまでも研究対象への情熱をもち続け、地道に研究を続けられる人が、長い目で見ると研究者として大成していると感じる。人と違う感性をもち、人と違うことをやり続けること。一般的には変わり者として見られることが多くてハードルの高いことだが、京都大学には、どんなに人と違っていても自分の関心のあることに純粋に情熱をもち続けることを尊重する校風がある。そのような校風も、数多くのノーベル賞受賞者輩出につながっているのではないだろうか。

▲京都大学の自由の象徴としても知られる「吉田寮」は、
100年を超える歴史を持つ
しかし、大学構内の名物だった「立て看」を規制する動きがあるなど、
「京大の自由」も徐々に変わりつつある
(画像は、2018年「入寮案内」から)

【石井 ゆかり】

<プロフィール>
石井 ゆかり

みどりの宇宙(株) 経営コンサルタント。筑波大学卒業。京都大学農学研究科修士課程修了。ヘルスケア関連メーカーに勤務後、人の健康と企業の発展に貢献したいという想いから、経営コンサルタントとして中小企業の経営支援を行っている

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