2024年03月29日( 金 )

糸島市職員の恣意的運用か?有名無実化されていた障がい者支援サービス(後)

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 実は、糸島市では、福岡市や太宰府市と同様に「重度身体障害者訪問入浴サービス事業実施規定」が13年4月1日に施行されていた。目的は、「家庭において入浴が困難な重度の身体障がい者に入浴の機会を提供することにより、利用者の健康保持と保健衛生の向上を図ること」とされ、糸島市内に居住する65歳未満で、家庭での入浴が困難な寝たきり、またはそれに準じる重度の身体障がい者が対象となる。

 また、申請においては、申請書に医師の意見書を添える以外の条件はなく、申請を受けた市長は審査内容を審査のうえ、承認・不承認を決定し、申請者に通知すべきとある。つまり、この実施規定に基づけば、申請を受け付けないこと自体が不適切といえる。

 さらに、糸島市に対し、上記の「重度身体障害者訪問入浴サービス事業実施規程」に関する情報公開請求を行ったところ、廃止になったという事実が存在しないことが判明。担当の糸島市福祉支援課に確認したところ、同規程は申請書類の様式変更などで一部が改正された以外は、制度自体は施行時から生きているというのである。Aさんが2年前に受けた説明と異なる内容だ。

 同課は、同じ規程にある「ほかの障がい福祉サービスなどにより入浴の機会の提供を受けることができる場合は、そのサービスを優先する」に従い、「窓口に来られた際は、まず、(訪問入浴とは)別のサービスを受けるように話している」と説明。施行以来のサービス利用者は2名のみ。うち「医療的ケア児」は1名。つまりAさんの長男だけ。審査を実施した申請数については「把握していない」という。

 そもそも、訪問入浴サービス以外の利用が困難だから申請を行うのであり、実施規程は、審査を行ううえで「医師の意見書」を添付することを求めている。仮に、ショートステイなどを利用しても、その利用状況は「事業者に電話で確認する」(同担当者)だけ。それならば、申請時に事業者の意見書(医師のみで十分と思えるが)を添付するようにしておけば済む話だ。

 実施規程を現場の市職員が勝手に解釈し、間違った運用を続けているのであれば、せっかくの福祉サービスが有名無実化されているも同然。糸島市には、実施規程の目的に沿った適切な対応を望みたい。

(了)
【山下 康太】

(前)

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