2024年03月29日( 金 )

教育の本質は、認め、尊重し、『社会で役立つ』ように導くこと~立花高校校長×新開ゆうじ対談(3)

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個性の尊重

 ──子どもたちの頑張りに対して、大人が正しく見つめ、認めてあげることが大切ですね。

 齋藤 当たり前ではなく、きちんと受け入れて見つめ、認めてあげることが教育の原点ですね。

 新開 それに関連して音楽の教育も同様に、それぞれの個性を認めることなく画一的な指導になっているのが現状であると。

左から、齋藤眞人氏と新開ゆうじ氏

 齋藤 そうですね。音楽に例えるならば、新開さんもご存知の通り、音楽とは本来自由度の高い表現が本質ですね。しかし残念ながら、現在日本の音楽教育は、指導者の「こうでなければならない」とする自由度の低い指導が数多く見られます。音楽だけでなく、教育そのものが、がんじがらめの状態です。これでは子どもたちの心身の成長を止めてしまいます。

 ──不登校だった子どもたちが貴校に入学してから、どのように成長していますか。

 齋藤 毎日のびのびしています。片道2時間かけて通っている子どもたちがいます。過去には、糟屋郡志免町から毎日2時間30分歩いて通っている子もいました。要するに子どもたちにとって、そこに求めるものがあれば、通学時間の長さなど、あまり関係ないのです。

 ──貴校の教職員の方々も齋藤校長と同じく高い志で、日々子どもたちと向き合いながら現場で奮闘されているのですね。

 齋藤 おかげさまで当校の教育理念に共感・理解をした教職員一同が一丸となって、日々子どもたちの成長のために地道に活動しています。そして、いい意味で“仲良し”です。単なる表面上の仲良し集団ではなく、どうすれば1人ひとりに寄り添った教育を実現できるかを日夜研さんしている仲間です。お互いが円滑なコミュニケーションを取りながら、快活な職場の風土をつくっております。まずは大人たちが良い人間関係を築くことが、第一歩だと確信しています。次世代を担う若い人材も当校に着任しており、活気ある教育現場となっています。ありがたいことです。

 ──福岡県下で不登校自立支援を全面に掲げているのは貴校のみですか。

 齋藤 フリースクールなどを除いて、学校として掲げているのは当校のみです。

 ──貴校を卒業された方々は、社会に巣立たれてからどんな活躍をしていますか。

 齋藤 社会に出てから、それなりに苦労はしています。しかし、その苦労は、どの高校にも当てはまる範ちゅうのものです。それ以上に、当校の教育理念や方針が、卒業した彼ら・彼女らの活動によって、各企業で認知されて啓蒙されています。大学・短期大学・専門学校への進学も成果を上げている一方で、短期大学や専門学校に進学した卒業生は、やや苦労しています。当校の比較的ゆっくりしたペースでの生活とは一変して、ハイペースが求められるからです。
 四年制の大学に進学した卒業生は、これまでの生活ペースで成長できている感はあります。卒業生たちのおかげで、当校の教育が世間に認められています。

 ──校内のカフェテラスで就労支援を実施されていますね。

 齋藤 はい。当校の3年間を経て、社会に出て活動するために少し早い時期から子どもたちへのサポートとして、校内のカフェテラスで就労支援を行っています。

(つづく)

【聞き手:弊社代表取締役 児玉直、文・構成:河原 清明】

<プロフィール>
齋藤 眞人(さいとう・まさと)

1967年宮崎県佐土原市生まれ。宮崎大学教育学部(現・教育文化学部)卒。宮崎県の公立中学校の音楽教員を経て、2004年(学)立花学園立花高等学校(福岡市東区)教頭として赴任。06年から校長、10年6月から理事長兼務。同校は、1人ひとりの人格を尊重した自立支援教育が特色である。その教育現場での活動を題材にした─「いいんだよ」は魔法の言葉─とする齋藤校長の講演会は、小中高PTA、地域自治会や各教育関係のみならず企業経営やマネジメントの立場からの依頼も多数寄せられ、全国各地で開催されている。福岡県私学協会副会長および福岡地区支部支部長。トロンボーン奏者でもある。

<プロフィール>
新開 ゆうじ(しんかい・ゆうじ)

1968年8月22日福岡市生まれ。92年3月国立音楽大学音楽学部声楽科卒。音楽教諭免許取得。家業である老舗珈琲専門店「シャポー」入社・勤務を経て、パティシエとして渡仏。97年帰国。2002年に福岡青年会議所に入会し、同所常任理事を歴任後08年理事長就任。10年衆議院議員(当時)古賀誠氏秘書を経て、12年12月16日第46回衆議院議員総選挙の自由民主党比例九州ブロックで初当選し、14年11月21日までつとめた。テノール声楽家としても舞台やライブにて活動。

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