2024年04月19日( 金 )

100年に1度の渋谷大改造計画の全容 中期経営計画で成長投資2,600億円(前)

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 渋谷駅前では現在、2027年度にかけて、行政や開発事業者などが一丸となった“100年に1度”といわれる大規模な再開発の真っ最中だ。東京急行電鉄(株)(以下、東急電鉄)では2018年度から20年度にかけての「中期3カ年経営計画」を策定し、成長投資として渋谷再開発に約1,200億円、沿線開発に約800億円を投入することを発表した。“再開発は都市経営の一環”という思想のもと、東急沿線でのサステナブルなまちづくりとして、「住む」「遊ぶ」「働く」がそろった拠点が連なる都市構造を目指し、その扇の要となる「渋谷」の再開発を推進する。刻一刻と変容する、渋谷と東急沿線での開発をレポートする。

再開発の先駆け「渋谷ヒカリエ」

渋谷ストリーム

 渋谷駅中心地区の再開発の先駆けとして、2012年に開業したのが「渋谷ヒカリエ」。それに続くのが、クリエイティブワーカーの聖地として期待されている「渋谷ストリーム」で、今年9月13日に開業した。歩行者動線を整備することで南北のまちの分断を解消するとともに、Google日本法人が入居予定のオフィスや177室のシティホテル「渋谷ストリームエクセルホテル東急」も開業。また、同時期に「渋谷ブリッジ」も開業したが、両プロジェクトの間には、官民連携での渋谷川再生事業や遊歩道整備が行われており、代官山・恵比寿方面への新たな回遊が期待される。

 渋谷駅の直上に位置する「渋谷スクランブルスクエア」Ⅰ期の工事は、最盛期を迎えている。周辺地区最大級のオフィスおよび商業施設に加え、クリエイティブコンテンツ産業の発展を促す交流施設、日本最大級の規模を誇る屋外展望施設を備え、渋谷の国際競争力強化を目指している。東棟が先行して工事を進めており、19年度に開業予定だ。これと東口の区画整理、銀座線の整備が連動し、乗換やまちに出る動線の強化を図る。

 一方、東急電鉄の成長投資2,600億円とは別に、同じ東急グループの東急不動産(株)が参画する渋谷再開発プロジェクトがいくつかある。東急プラザ渋谷跡地を含む周辺エリア開発の「道玄坂一丁目駅前地区市街地再開発」は、19年秋に竣工予定。商業施設ゾーンには次世代に向けた「MELLOW LIFE(メロウ ライフ)」を提案する新世代の商業施設として、「東急プラザ渋谷」が開業を予定している。

ドンキホーテHD、三菱地所も

ドンキホーテ渋谷再開発

 さらに(株)ドンキホーテホールディングス(HD)が、渋谷再開発のメンバーに加わった。東京・渋谷区道玄坂の旧ドン・キホーテ渋谷店跡地周辺で、大型複合ビルを開発すると発表。19年1月に着工し、22年4月に竣工の予定。文化村通りに面した約5,700m2の敷地に地下1階・地上28階建て、延床面積約4万1,000m2のビルを建てる。高さは120m。大原孝治社長兼CEO(最高経営責任者)は記者会見の席上で、「渋谷地区全体の活性化に貢献したい」と語っている。

 そして、もう1つ注目するニュースが飛び込んできた。三菱地所レジデンス(株)、大林新星和不動産(株)、東急不動産は、東京都渋谷区で開発中の「ザ・パークハウス 渋谷南平台」(総戸数100戸)のモデルルームを10月6日にグランドオープンした。閑静な住宅街である南平台エリアに位置しながら、官民一体の大規模再開発により大きく変化を遂げようとしている街「渋谷」に住まう稀少性が注目されている。JR山手線・東急東横線・東京メトロ半蔵門線など9路線が乗り入れる「渋谷」駅徒歩7分という高い交通利便性となっている。7月3日に物件ホームページを開設後、1,100件超の問い合わせがある。10月下旬に販売開始予定で、竣工は19年11月中旬の予定だ。設計・施工は東急建設(株)が担当した。

「ザ・パークハウス 渋谷南平台」の外観完成予想CG

 マレーシア大使館を始めとするさまざまな大使館が連なり、異国情緒の漂う南平台エリアは、かつて目黒方面まで見渡せたという南向きの高台に位置する閑静な住宅街でありつつ、総延床面積約89万4,000m2という壮大な規模で進行中の渋谷再開発周辺エリアに位置する。渋谷エリアはアジアヘッドクォーター特区に指定され、27年に向けて国内外からクリエイティブコンテンツ産業企業の誘致が見込まれることで、世界へ発信する一大拠点への変貌が期待される。セルリアンタワー東急ホテル内フィットネスクラブの利用が可能なほか、東急百貨店と連携した外商サービスも展開予定だ。

 渋谷区南平台アドレスでの供給は1995年以降4物件のみであり、直近の物件は07年の販売。三菱地所グループとしても05年の「パークハウス南平台コートレジデンス」(総戸数13戸)以来13年ぶりの供給となる。この地域では、マンション用の土地取得が難しい事情があったが、今回、日本たばこ産業の跡地を購入することが可能になったため、実現した。「50代~60代の二次取得層から、渋谷で新規産業の仕事をする人をターゲットにしている」(三菱地所レジデンスの岡橋志郎第二販売部長)。

 三菱地所レジデンスの宮島正治専務執行役員は、「再開発を期待され、渋谷の居住系エリアということで反響は大きい。投資目線での購入意欲も強い。海外からの問い合わせはアジアなどから10%ほどある」と語る。

(つづく)

【長井 雄一朗】

(後)

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