福岡市の浸水対策 進捗と見通しを追う
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福岡市では2000年度以降、前年の豪雨被害を教訓に策定した「雨水整備Doプラン」に基づき、博多駅、天神を始め、市内59地区を重点地区に指定。約1,258億円を投じ、雨水幹線やポンプ場整備などの浸水対策を進めてきた。博多駅周辺を対象とした「レインボープラン博多」は12年度に完了。18年度をもって、「Doプラン」および天神地区が対象の「レインボープラン天神」の第1期事業ともに完了を迎える。同市では現在、19年度以降の新たな浸水対策のプランづくりを開始。福岡市の浸水対策の進捗、今後の見通しなどについて取材した。
博多、天神含む59地区に雨水幹線やポンプ場などを整備
1999年6月29日に発生した豪雨により、博多駅および天神の地下街が浸水。博多駅近くのビル地下で1名が溺死するなど、市内一円で甚大な浸水被害が発生した。同市では、これを教訓に翌年、浸水被害の軽減のため「雨水整備Doプラン」を策定。この99年の豪雨によって浸水被害のあった138地区のうち、被害が重大で、過去にも複数回浸水した地区を重点地区に指定。1時間あたり59.1mmの雨を想定し、雨水幹線やポンプ場の整備を進めてきた。
博多駅周辺や天神地区は、ほとんどがアスファルトで覆われてただでさえ水はけが悪いことに加え、地下空間が多い。平時は多くの人で賑わう場所だが、水没のリスクと背中合わせにある。同市では、両地域の重点地区として4地区を指定。整備水準を引き上げ、99年豪雨時の実績降雨である1時間あたり79.5mmを想定した「雨水整備レインボープラン」を策定し、博多駅は2004年度から、天神は09年度から事業に着手した。博多駅のレインボープランは12年度に完了済みだ。
調整池などでの雨水貯留で浸水被害防ぐ
レインボープラン博多では、雨水貯留管を始め、山王雨水調整池、ポンプ場などを整備。雨水貯留管は、口径5m程度の管きょを住吉通り、竹下通りなどの道路下(地下15~30m)に約2.5kmにわたって布設した。約3万m3の雨水を貯留する。事業費は約353億円。
博多駅の南東に位置する山王公園には、野球場を約1.8m掘り下げた「山王1号雨水調整池」(有効水深約1.5m)のほか、公園グラウンド地下に、雨水貯留する空間として、「山王2号雨水調整池」(有効水深6.4m)を敷設した。こちらも合計約3万m3の貯留能力がある。貯留した水は、ポンプ場などを介して、御笠川に放流する。山王調整池は、06年6月に供用開始。09年7月24日の豪雨発生の際には、山王2号雨水調整池で水深約5m、約1万1,000m3と山王1号雨水調整池を合わせて約2万m3の雨水を貯留し、浸水被害を防いだ実績がある。
レインボープラン天神では、第1期事業として、雨水貯留管などの整備を進めている。雨水貯留管は、大正通り(警固1丁目)から都市計画道路長浜臨港線道路下に中部2号幹線、今泉公園から国体道路下に中部7号幹線(警固交差点で2号幹線に接続)などを約4.3kmにわたって布設する。事業費は約157億円。2号幹線と7号幹線の一部は、13年度に暫定供用を開始している。18年度末には貯留可能な雨水は約6万m3となる予定。貯留した水は、長浜と那の津のポンプを経由し、博多湾に排出する。
新たな浸水対策プラン18年度中に策定へ
「Doプラン」と「レインボープラン天神第1期事業」は、いずれも18年度で完了。18年間にわたって続けられてきた福岡市の浸水対策も、大きな区切りを迎える。同市では、「今後も浸水対策は重要」という市民のアンケート結果などを踏まえ、新たなプランの策定を進めている。事業期間は19年度から8年間。事業費など具体的な部分は未定だが、過去に浸水被害のあった地区のうち、すでに着手済みの59地区以外の地区を整備していく考えだ。18年度中に具体的な計画をまとめる。
19年度からは、レインボープラン天神の第2期事業にも着手する。2期事業では、新たに天神北東部地域約80haを対象区域に加え、福岡市役所周辺を含む明治通り以北を中心とした地域に雨水管を整備する。事業規模は100億円程度を想定。こちらも具体的な計画は今年度中にまとめる。
浸水リスクに関する市民理解が必要だ
今から5年ほど前、レインボープラン天神について取材したことがある。福岡市はかつて、水不足に悩まされたが、近年では、気候変動に起因するとされるゲリラ豪雨の多発などにより、大雨による浸水被害の脅威に晒されるようになっている。この点について、「水に関して皮肉な二面性を強いられたまち」だと書いたことがある。今でもその考えに変わりはない。その後、ある災害対策の専門家に話を聞く機会があったが、「天神は(浸水リスクがあるので)やはり危ないですよ」と指摘していた。
いたずらに危機感を煽るつもりは毛頭ない。都市の繁栄のウラには、常にそういうリスクがつきまとうものだ。近年の雨の降り方を考えると、ハード整備には限界があり、自助、共助などソフト面の取り組みが重要だ。そのことを1人でも多くの市民が理解することが、何よりもの浸水対策になるのではないか。
【大石 恭正】
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