2024年04月24日( 水 )

【書評】『なぜ、優秀な人ほど成長が止まるのか』田坂広志(著)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 著者の田坂広志氏は、多摩大学大学院の教授でビジネスマンが集う田坂塾の塾長。東京大学大学院で工学博士(原子力工学)を取得後、民間企業で働いた経験もある。ダボス会議を主催する世界経済フォーラムの「Global Agenda Council」のメンバーや内閣官房参与に就任した経歴ももつ。

 大学院での7年間の研究生活を終え、希望する大学や研究機関に就職することがかなわず、民間企業に就職するしかなかった同氏は、入社後も希望した研究職ではなく法人相手の企画営業の部署に配属される。働き始めて、大学や大学院で学んだ専門知識が、営業や企画の実務にまったく役立たないことを痛感する。途方に暮れた「7年遅れのランナー」は「仕事を研究する」ことで活路を拓こうとする。

 本書は同氏が分析した成長を止める「7つの壁」を乗り越えるための技法に焦点が当てられている。「学歴の壁」「人格の壁」「他責の壁」など、何が成長を阻害しているのか。それを乗り越えていくためには、物事をどう捉え、解釈し、対処していくべきか、自らの経験を基に幅広い視点で解説している。

 情報革命とAI革命が「優秀な人の価値を奪う」のはなぜか。今後、人間とテクノロジーが競合していく時代で、人間が磨くべき能力が何かを知る上でも参考になる。同氏が提唱する思想、ビジョン、志、戦略、戦術、技術、人間力という「7つの知性」を垂直統合した「21世紀の変革リーダー」への成長を目指す考え方の、入門書としても相応しい一冊だ。

【緒方 克美】

関連キーワード

関連記事