2024年04月24日( 水 )

女性の雇用創出と社会貢献へ 広がる「フラワーソープ」の可能性

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日本フラワーソープ協会(運営会社:(株)デキャンタージュ)

 石けんからつくられるタイの伝統工芸「ソープカービングフラワー」。色鮮やかで香りが良く、とくに母の日のプレゼントとして東京の某有名百貨店では毎年3万個弱が完売。ただし、自然災害などの諸事情でタイからの安定供給が難しく、国内生産が望まれていた。その要請に応え、福岡の企業(株)デキャンタージュが九州産の原料によってソープフラワー用オリジナル石けん粘土の開発を実現。同社社長は今年7月に「日本フラワーソープ協会」を発足し、この新しいアートを女性の雇用創出と社会貢献につなげていく活動を始めている。

ゼロからの挑戦

 今年10月末に開催された「第20回 福岡デザインアワード」。今年7月の設立から3カ月、本格始動からすれば、わずか2カ月という異例のスピードで、日本フラワーソープ協会(JFSA)は、家具・インテリア部門に出展し最終選考に残った。福岡県産業デザイン協議会と福岡県が主催する同賞は、日本国内の中小企業者などが製造・販売する商品のなかから、オリジナリティと市場性を有し、デザイン性に優れたものが表彰される(同賞HPより)。今回惜しくも「フラワーソープ」は各賞の受賞こそ逃したものの、審査員から高い評価を受けた。JFSAの小林由紀理事長は、協会員の創作意欲にとって良い刺激になったとし、「フラワーソープ」の作品評価だけでなく、普及や販売実績を表彰する年中行事を自主開催するアイデアが浮かんだという。

日本フラワーソープ協会 小林由紀理事長
福岡デザインアワードに出展した「フラワーソープ」

 小林氏は同協会を運営する(株)デキャンタージュの代表。同社は香りと誕生月で選べる九州産の無添加手づくり洗顔石けん「バースデーストーンソープ」を全国百貨店で販売する。また同社は、本来、システム開発やスマートフォンアプリの開発、ホームページ制作を手がけるIT企業、小林氏自身もITエンジニア。自社アプリ利用者へのプレゼントとして、さらにはアレルギー体質の女性にとって選択肢を広げたいとの想いから「バースデーストーンソープ」を商品化した。そのモノ売りからコト売りを追求した商品設定が評価され、全国2万2,000人を超える女性経営者のネットワークをもつ全国商工会議所女性会連合会が2002年に創設した第16回「女性起業家大賞」のスタートアップ部門(創業5年未満)優秀賞を受賞した。

 この「バースデーストーンソープ」が「フラワーソープ」との縁を招き寄せた。17年にわたり、タイから「ソープフラワー」を輸入・販売していたある商社の社長が、西武百貨店池袋本店で販売されている「バースデーストーンソープ」を見かけ、「この商品をつくり出した人ならできるかもしれない」と、小林氏に国内生産化を依頼したのである。

 しかし、「原料がどのようなものかわからない、まったくのゼロからの開発でした」と小林氏。簡単につくれるものではないが、奥阿蘇にある無添加石けん工房「ラ・コンテス」の協力も得て、徹夜もいとわず開発に取り組み、ついにフラワーソープ用オリジナルの石けん粘土を生み出した。

JFSAのシステム

1万個の納品は通過点

 会員によってつくられた「フラワーソープ」は、検品を行い、品質が認められればJFSAが買い取りを行う。好きな時間に自宅で仕事ができ、収入につなげることができる。人に教えて「フラワーソープ」のつくり手を増やすことも収入を得る手段となるなど、育児女性の在宅ワーク支援、女性の雇用創出、学生の就活支援、障がい者の就労支援として「フラワーソープ」を普及していくことを考えた。

 本格的に活動を始めたのは8月下旬。JFSAの主な講習は、趣味向けのベーシックコース、買い取りプログラムへの参加資格などを得るアドバンスコースの2つ。後者では、「フラワーソープ」のつくり方だけでなく、JFSAの理念や行動指針なども教えており、その広がりに厚みをもたせている。

発展するJFSA

 単なるものづくりではない、女性の雇用創出と社会貢献という理念活動であることに賛同し、次々と協会員が増えている。現在では、東京、福岡、大分、熊本に教室があるほか、各地のマルシェなどで体験会が実施されている。

 「第20回 福岡デザインアワード」では、和をテーマにした作品も展示された。「将来的には、ここに石けん粘土でつくられたジャングルや動物たちが並んでいるかもしれませんね」と、小林氏は協会員の創作意欲の広がりに期待する。来年9月に協会員を対象にしたコンテストを開催する予定。

1万個の納品は通過点

 次の課題はつくり手の確保だ。「フラワーソープ」は、現在、19年の母の日(5月12日)に合わせて1万個を某有名百貨店に納品するという計画が進められている。しかし、この納品はゴールではなく通過点に過ぎない。

 また、「フラワーソープ」は、母の日のプレゼント以外にも冠婚葬祭の贈答品やホテルのインテリアとして商品化できる。JFSAでは、全国への普及活動とともに販路の拡大にも努めていく方針だ。

【山下 康太】

<INFORMATION>
■日本フラワーソープ協会

理事長:小林 由紀
所在地:福岡市中央区今泉1-2-30
設 立:2018年7月
TEL:092-791-2577
  運営会社:(株)デキャンタージュ)
FAX:092-791-2578
URL:https://flowersoap.org

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