2024年04月19日( 金 )

顧客満足を追求し続けて60年 小倉営業所オープンで飛躍誓う(前)

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(株)山電

創業時から続く「役立ち営業」、顧客に思いをめぐらせること

 1955年8月、(株)山電は北九州市八幡東区前田町で産声をあげた。第二次世界大戦の終結から10年が過ぎた当時、電気に関わる仕事は、まさにこれからが興隆の時代というところだった。創業者・山田輝男氏は、その兆しを察知し電気工事材料の卸業商社・山電を創業したのである。八幡地区といえば、当時は日本有数の工業地帯だった。生産ラインの拡張、工場の新築、新たに生まれ変わる街のビルなど、電線ケーブルなどの電気工事材料の需要は高かった。その波に乗り、商材の幅を広げて顧客満足の追及を続けていったのである。

 63年間、地道に着実に積み重ねていったのは電気製品を通じた信頼だ。同社は不備のない書類作成、納期遵守を貫いて事業に取り組んできた。

 「売上をつくっていくという考え方は、他社と変わらないと思います。けれども、そこがゴールではありません。どれだけお客さまのことに思いをめぐらせることができるかが、私たちのあるべき姿だと考えています。お客さまの立場に立ち、より良い提案をして納入納期を守り着実に1つひとつ積み上げていくことで、これまで事業を続けてくることができました」。

 竹下博会長はこのように自社の営業を語った。同社ではこの営業スタイルを「役立ち営業」と名付けている。ただ顧客のもとを訪れて「何が必要か」を聞いて納品するのではなく、何が役に立つかを自ら考え、顧客に提案する。

(株)山電 竹下 博 代表取締役会長

 「お客さまはそれぞれ、地域性であったり、組織の大きさであったりと、さまざまな環境にいらっしゃいます。そのお客さまが『これが必要』と思える、役立つ製品を、お客さまの立場に立って提案することが私たちの仕事です。電気製品は日進月歩で新商品が開発されていきます。私たちはその先端の商品を含めてお客さまに最適な提案をしていくことが求められています。ただ言われた通りに納品するだけでは、お客さまは新商品の利便性を知らないままになってしまいますから」(竹下会長)。

 同社が扱う商品数は1万品種・2万アイテムに上る。商品を覚えるだけで2年はかかるという。その豊富な商品のなかから、「役立ち営業」を積み重ね、その感謝の気持ちが同社を60年以上にわたって支えてきたのである。

 「これから先、スマート家電の普及、家庭のオール電化を始めとして、電気製品は大きく変わっていくことが考えられます。社会全体として高齢化はもっと進んでいくことも予測されますし、電気製品は変化が進んでいくでしょう。私たちも『電』の字のつくものならば、すべて手を広げていくことも必要になると思います」。

 創業時から半世紀が過ぎ、加速度的に進歩していく電気製品に、専門家として携わり続けていきたいと竹下会長はいう。激しい進化を続ける電気製品に対応できるスピード感は同社の特徴の1つでもある。現在の社員数は約40名。この規模だからこそできることがあると竹下会長は指摘する。

 「やはり少人数の組織だからこそ実現できるスピード感は私たちの強みだと思います。小さな組織ですから、目が行き届きますし、すぐに上司、社長に相談することもできます。結束力が強い会社ですよ(笑)」。

 社員旅行や花見、忘年会など社内イベントを通じてコミュニケーションをとりやすい土壌をつくり事業に生かす。風通しの良い社風は機動力となってきめ細かいサービスにつながっていく。それが同社の強みとなっているのだ。そして、1人ひとりの力を結集して業務に取り組んでいる。

 数多い取扱商品や得意先を把握するだけでも一苦労だ。これまでに築いてきた顧客数は450社に上る。その全貌を理解し一人前になるための教育には、とくに力を入れているところだ。社員教育では製品知識、顧客の状況などだけでなく、礼儀、マナーといった人としての基本的な部分から徹底して教育していく。それが高い社員定着率につながり、さらには顧客からの信頼へとつながっているのである。

 「創業から60年を越え、100年に向けて新たな体制のもと、組織づくりを進めています。中身の濃い会社にしていきたいですね」と竹下会長は笑顔で将来を語った。

(つづく)

<COMPANY INFORMATION>
代 表:竹下 博
所在地:北九州市八幡西区割子川2-15-34
設 立:1961年5月
資本金:2,800万円
TEL:093-631-9440
URL:http://www.kitakyu-yamaden.co.jp

<プロフィール>
渡邊 貴弘(わたなべ・たかひろ)

 1969年5月生まれ、福岡県古賀市出身。91年4月、(株)山電に入社。営業畑を歩み、2014年4月に営業部長、15年4月に常務執行役に就任。竹下博前社長にリーダーとしての手腕を買われ、16年2月に取締役社長に抜擢される。

(後)

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