2024年04月19日( 金 )

【展望2019】長崎市長選、多選による市政硬直化が争点に

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MICE事業めぐる政治姿勢に疑問符

4選目指す田上富久氏

 来年4月14日告示、同21日に投開票が行われる長崎市長選は、4選を目指す現職の田上富久氏(61)と新人で長崎市議の橋本剛氏(49)、同じく新人で長崎市選出の長崎県議・高比良元氏(66)が立候補の意思を表明している。

 田上氏は、11月16日に記者会見を開き、4選を目指して立候補する意思を表明。田上氏は長崎県五島市出身。県立南高、九州大学法学部を卒業後、1980年に長崎市役所入庁。市観光振興課主幹、市企画部統計課長を務め、2007年4月の長崎市長選で初当選し、現在3期目。07年4月の市長選は、選挙期間中に現職・伊藤一長氏が射殺され、補充立候補で出馬した。ちなみに、前回(15年4月)の市長選は無投票で再選された。

市政刷新の期待集める橋本剛氏

 橋本氏は、今年8月末に行われた自身の出版記念パーティーで立候補意思を表明した。橋本氏は長崎市八幡町出身。県立北高、早稲田大学政治経済学部を卒業後、1993年に農林水産省入省。2009年に同省を退官し、10年2月の長崎県知事選に立候補し、次点(得票22万2,565票)で落選。その後、国会議員秘書や大阪市特別参与を経て15年4月、長崎市議選に初当選した。

 最も早く立候補意思を表明したのは高比良氏。高比良氏は、県立北高、早稲田大学法学部卒業後、長崎県庁入庁。旧三和町長、長崎市議を経て、07年の長崎県議選に初当選し、現在3期目。前回の市長選でも高比良氏は市長選への立候補意思を示していたが、結局、県議選に回って不出馬だった。

 課長から一気に市政トップに登り詰めた田上氏は、毎年8月に長崎平和宣言を行う長崎市長として全国的な知名度がある。温和なイメージから、幅広い層から安定した支持を得てきた。しかし近年、国際会議などを行うMICE(マイス)施設の建設をめぐり、強引な政治姿勢が物議を醸している。

問われる市民の声への向き合い方

 長崎市は、戦後から地域経済の発展を支えてきた基幹産業・造船業の衰退と、市町村ワースト2という人口減少数(15年国勢調査)から閉塞感が強まっている。同時に、現市政の継続に対する不安が広がる。

 その象徴といえるのは、県下最大の販売部数を誇る地元紙に掲載された意見広告。次の市長選を「長崎再活性・最後のチャンス!」とし、市組織の硬直化など多選の問題点を解説。現市政については、「チャレンジしなかったから失敗がなかった」と切り捨て、「12年間もチャレンジしなかったリーダーが突然叫んでも市政自体がついていくとは考えられない」と痛烈に批判している。

 市職員出身の田上氏とは対照的に、橋本氏は、官僚時代の経験と政界・中央官庁を始めとする人脈を買われ、期待を集めている。現市政のMICE事業については、「周辺の民間開発との競合などを再検証すべき」と慎重な見方を示してきた。このMICE事業については、施設整備の是非を問う住民投票条例案が12月14日に長崎市議会で否決(賛成12、反対25)された。田上氏は同条例制定に反対する意見書を付けており、橋本氏は採決で賛成票を投じた。市民の声への向き合い方も1つの争点となるだろう。

【山下 康太】

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